通期予想を引き上げたプリンティングソリューションズ事業

セイコーエプソンは、2017年度第1四半期(2017年4月~6月)連結業績を発表し、増収増益の好調な滑り出しをみせた。売上収益は前年同期比6.6%増の2548億円、営業利益は110.5%増の146億円、税引前利益は126.9%増の144億円、当期利益は147.7%増の102億円だ。

その中でも特に好調なのが、同社の基幹事業であるプリンティングソリューションズ事業。といっても、日本における個人向けインクジェットプリンタや、事業基盤を持つ西欧でも市場は縮小している。それにも関わらず、第1四半期が終了した時点で、4月28日に発表した年度初めの計画を上方修正してみせたのだ。

同社によると、インクジェットプリンタの販売台数は当初は前年比8%増。しかし、今回の上方修正では9%増へと1ポイント拡大した。2016年度実績が5%増、2017年度第1四半期の実績が7%増であることと比較しても、高い成長を見込んでいることがわかる。

エプソンでは、インクジェットプリンタの具体的な出荷台数は明確にはしていない。だが逆算すると、2017年度の年間目標は全世界でおよそ1640万台。その上方修正の原動力になっているのが、大容量インクタンクモデルである。

2018年度には大容量モデルが過半に?

大容量インクタンクモデル「EW-M770T」

日本でも今年に入ってから、大容量インクタンクモデルとして「EW-M770T」を発売し、本格的な展開を開始した。しかし海外では、2010年にインドネシアで市場投入したのを皮切りに、新興国市場を中心に展開しており、全世界150カ国以上で販売されている。

本体価格を安くして、インクカートリッジで収益を得るビジネスモデルを日本では展開しているが、新興国では本体価格を高く設定し、インクカートリッジの交換を不要とするビシネスモデルが広がっているのだ。大容量インクタンクモデルの人気の要因は、プリントコストの低減と連続大量印刷の実現。そして、インク交換回数が少なく、インクカートリッジの管理コストが不要になるといったメリットがある点だ。

2016年度実績では、全世界で610万台の大容量インクタンクモデルを販売したが、2017年度の当初計画では730万台の出荷計画を打ち出していた。これが今回の上方修正によって、740万台にまで引き上げられた。前年比21%増という成長率だ。これによって、エプソンのプリンタ出荷量の約45%が、大容量インクタンクモデルが占めることになる。この勢いを持続すれば2018年度には、インクカートリッジモデルと大容量インクタンクモデルの構成比が逆転する可能性もありそうだ。

セイコーエプソン 取締役執行役員経営管理本部長 瀬木 達朗氏

先進国ではビジネスが緒に就いたばかりで、日本でも大容量インクタンクモデルの構成比は数%程度に留まる。一方で北米は5%をすでに超えており、「新興国市場だけでなく、先進国市場においても大容量インクタンクモデルの販売が伸びている」(セイコーエプソン 取締役執行役員経営管理本部長の瀬木 達朗氏)という。

2017年度第1四半期決算においても、プリンティングソリューションズ事業の売上高は前年同期比5.5%増の1659億円と成長を遂げており、営業利益は前年同期比72.7%増の221億円と大幅な伸びを見せている。「大容量インクタンクモデルの販売数量増加による増収効果と、インクカートリッジモデルの販売台数減少に伴う費用減が、プリンティングソリューション事業の利益拡大に貢献している」(瀬木氏)という。

日本のプリンタ市場の低迷ぶりとは裏腹に、海外では、大容量インクタンクモデルによる成長戦略が推進されているわけだ。