5つの要素を組み合わせて顧客に情報提供
Cat Connect Solutionsの4つの管理のうち、機械管理を担うのが同社のコンディションモニタリングセンターだ。「センターでは、機械から得たデータを一元管理・分析し、機械の正しい維持管理につなげることで故障を防ぎ、お客様に長期間にわたり、安全に建設機械を使用してもらうことを目的として、2015年11月に設立された」。
そう語るのは、日本キャタピラー プロダクトサポート事業本部 サービス業務支援部 EM/CM推進課 課長の鷲見豊氏だ。「これまで蓄積されてきた膨大なデータを活用することで、現在の機械の状態を想定することが可能だ」と同氏は続けた。
同センターでは「電子データ」「S・O・S分析」「インスペクション」「修理歴データ」「サイトコンディション」の5つの要素を総合的に判断(厳密には5つでなくても情報があれば判断は可能)し、機械の状態判断や顧客へのアドバイスなどを実施している。
機械の位置情報、稼働時間、燃料消費量、積載量、不具合情報などの電子データは、建設機械に搭載されたProduct Linkというシステムを介しリアルタイムに収集される。それをVision Linkと呼ばれるクラウドサービスで可視化し、携帯電話や衛星ネットワークを使い、離れた場所でも機械や現場の情報を取得できる。あらかじめ設定した携帯電話にアラートを飛ばすことも可能だ。
S・O・S分析は、機械から採取したオイルや冷却水、燃料などをキャタピラーの専用ラボで分析し、目に見えない機械内部の不具合の兆候を把握するサービス。キャタピラーが1974年から導入しており、日本の神奈川県相模原市のほか、中国とスペイン、アメリカ、南アフリカ、ロシア、ドバイにラボを展開している。専門員がラボから届く分析結果を元に判定を行い、顧客に結果を報告する。
インスペクションは、人が現場や機械を見て行う機械点検のデータのこと。同社のメカニックが行うさまざまな点検や顧客による日常点検などのデータで、機械の状態を分析できる。
修理歴データは、納入から現在までの修理の履歴のデータ。それらを踏まえ、電子データやS・O・S分析など、ほかのデータとも合わせて修理カ所の予測や傾向を分析する。
サイトコンディションは、現場の状況や機械の稼働状況のデータを収集。長年蓄積してきたデータや経験をベースに総合的に分析し、それぞれの現場に合わせた運転操作やメンテナンスをアドバイスする。
鷲見氏は「コンディションモニタリングセンターで分析された結果レポートは、担当セールスマンを通じて顧客に提出し、建設機械の維持管理につなげている。同センターには専門知識を持ったコンディションモニタリングアドバイザーが5人在籍している」と、説明する。
また、同氏はコンディションモニタリングセンターの方向性について「今後、コンディションモニタリングアドバイザーを増員していきたいと考えている。そして、顧客が機械を購入する前からアドバイザーが携わり、機械の取り扱いや現場の状況などのアドバイスを行った上で、機械を使い始めていただけるような体制でサポートすることが理想的だ」と、展望を語った。
日本CATの強み
このように、日本キャタピラーではCat Connect Solutionsの展開やコンディションモニタリングセンターの運用により、建設機械にかかわる分野のIT化に積極的に取り組んでいる。 Cat Connect Solutionsは、他メーカーの機械を登録することで現場全体を管理することも可能だ。ただ、細かいデータが確認できない場合もあるという。ならば、他社メーカーの建設機械とも連携できるように、ユニバーサルデザイン化する可能性はないのか。その問いに鷲見氏は「北米では、メーカー間の格差がないようにソリューションをISO化していく動きもある」と、説明した。
そして「われわれの強みは、キャタピラーのテクノロジーを使い、機械管理、施工管理、生産管理、安全管理まで全方位的にカバーする世界共通のクラウドソリューションを提供しているほか、コンディショニングセンターを独自に運用していることだ。特にS.O.S分析は、結果を分析する専門員が各地におり、結果を知らせるだけでなく、故障の兆候や改善策など具体的なアドバイスにつなげている」と、鷲見氏は力を込めた。今後も同社の動向とともに、建設機械のITを活用した機械管理術の進化に注目したい。