教育現場へのICT導入が、急速に進められている。端末一人一台体制やプログラミング授業必修など、矢継ぎ早に文部科学省の方針が示されたからだ。そんななか、先進のICT教育環境を整えた学校を見学させてもらった。東京の聖徳学園だ。
案内してくださったのは聖徳学園 教育ビッグデータ エバンジェリスト 情報システムセンター長 ICT支援員 横濱友一氏だ。まず、名刺に印刷されている“ビッグデータ エバンジェリスト”という肩書きに少々驚きを憶えた。エバンジェリストということは、ICT化を進めるほかの教育機関に、助言や指導を行っていることが容易に想像できる。これだけでも、聖徳学園が先進のICT教育環境を整えていることがうかがえる。ただ、横濱氏はエバンジェリストとはいっても、普段は教職なのだそうだ(以下、横濱先生)。
多目的に使えるスペース
続いての驚きが、最初に通された四方をガラスに囲われた部屋だ。採光が豊かで明るいこの部屋は、“学校の一室”というよりも、先進企業の会議室のような様相だ。70インチクラスのディスプレイが4基備えられ、オーディオ機器も充実している。細かいことだが、記者会見のときによくみる、バックパネルまで用意されている。この部屋はどういう用途で使うのか横濱先生にたずねると、「教室です」という答えが返ってきた。
最新のオフィスかと思うほどの施設だが、奥には自習をする生徒や、“早弁!?”(筆者が入室したのは正午前だった)をする生徒がチラホラとみられた。横濱先生は「基本的に、生徒が自主性を持って使える教室になっています」と笑みをみせる。そのほか、複数のクラスが合同で授業を受けたり、国語や数学といった異なる科目の同時授業を行ったりとフレキシブルに使えるようになっている。
印象的だったのは、部屋の片隅に小型の掃除機が用意されていたこと。横濱先生によると、「掃除機ひとつを置いておけば、生徒たちがこの部屋を使ったあとに、自主的に掃除していきます」とのことだ。日本では、小学生の頃から生徒たちが教室を掃除するという習慣が根づいているが、それが中学・高等学校の聖徳学園でも実践されているという証だ。