「大きく口を開けて笑いたいけれど、歯並びの悪さが気になる」「歯を見せたくなくて、つい口を手で覆ってしまう」……。歯並びに自信がなくて、こんなシチュエーションを経験したことはないだろうか。たかが歯並び、されど歯並び。歯並びが悪ければ表情も曇りがちになるほか、歯ブラシが届きにくく虫歯の原因にもなってしまう。
では、歯並びをキレイに矯正するにはどんな方法があるのだろうか。慶應義塾大学病院で歯科・口腔外科担当の中川種昭先生に話をうかがった。
虫歯や歯周病も歯並びに悪影響を与える!?
「歯並びが悪い」と一言で言っても、さまざまなケースがある。例えば、「あごの大きさに比べて歯が大きく、歯と歯が重なってしまう部分がある」「歯が小さいためキレイに並びきらず、歯と歯の間にすき間ができてガタガタになっている」などが一例だ。
「歯並びには、I級からIII級まで異なるケースがあり、歯科医はその分類で診断します。I級は、上あごと下あごの前後的位置関係に問題はないけれど、歯自体がその中でうまく並んでいない人。II級は、上あごが下あごに対して前に出ていて前歯が出ている人。III級は逆に下のあごが前に出ている人です。歯並びの悪さは骨格の問題なのかどうか、原因をきちんと分析することが大切です」
そもそも、どうして歯並びが悪くなってしまうのだろうか。原因の一つとして先天的な遺伝が関係していると中川先生は解説。あごの大きさと歯の大きさがちぐはぐであるなど、あごの発育に遺伝的な要因があることが多いという。
「後天的な原因としては、悪習癖や発育不良があります。例えば、子どもがずっと指しゃぶりしていると、指の力によって前歯が少しずつ前に押し出されていきます。また、子どものころ食べ物をしっかり噛む習慣がないと、あごが発達せず、歯がキレイに並ぶ土台ができなくなってしまいます」
もちろん、成人してから歯並びが悪くなるケースもある。その原因の一つが「歯周病」だ。歯周病は、歯を植えている組織が弱くなり、歯を支えている骨が溶けてきてしまう病気。歯の周りにも炎症を起こすことで歯がぐらぐらと動き、歯が移動してしまう。
「『歯周病になって急に歯並びが悪くなった』という場合は、歯が支えを失って動くことから起きたのです。ほかにも、虫歯によって歯を失い、そのままにしておくと歯並びは悪くなります。歯は、歯と歯の間を詰めるように動くので、空いた空間に歯が倒れ込んでいき歯列不正が起こります」
歯並びが悪くなると、歯ブラシが届かなくなり、さらなる虫歯や歯周病の原因になる。さらに、歯がぐらぐらすると食べ物がうまく噛めなくなり消化不良を起こすなど、悪循環に陥ってしまうとのこと。
歯周病や虫歯がない人でも、歯ぎしりのクセがあれば要注意。歯と歯をギシギシとすり減らしながら、少しずつ前へと押し出しているため、知らぬうちに歯並びが悪くなっていくのだという。
「歯は、大人でも子どもでも日々動いています。毎日の歯のケアが、歯並びにも影響しているんです」