IoT向け自社開発チップセットを強化

画像7:Andreas Thiel氏

GNSS分野では以前からチップレベルでの自社開発を行ってきたu-bloxであるが、これまでセルラー向けでは他社製チップを使用してモジュールを組むというビジネス形態をとってきた。しかし、IoTおよびセルラーM2M市場の拡大が確実に見込めるようになってきたことから、同分野でのチップレベルの自社製品開発に乗り出し、昨年11月に発表したセルラーM2M用LTEモジュール「LARA-R3121」では、自社開発のチッププラットフォーム「UBX-R3」を初めて使用している。同事業については、u-blox共同創立者・エグゼクティブVPのAndreas Thiel氏がプレゼンテーションを行った。

「UBX-R3」は通信規格LTE Cat1に対応するもので、帯域幅としてはナローバンドとブロードバンドの中間あたり(下り10Mbps/上り5Mbps程度)を狙って設計されている。またその後、よりナローバンド側の規格であるCat M1とCat NB1に対応したチップ「UBX-R5」も発表。さらに今後はCat M2/NB2対応の製品開発も予定しており、IoT/M2M向けの省電力・広範囲・低速通信(LPWA:Low Power Wide Area)の分野で自社開発製品の充実を図る姿勢が鮮明になっている。

画像8:モジュールとチップの選択(資料提供:u-blox)

同社では、まず他社製のチップを使用してモジュールを組んで製品化するところから、新規事業に着手することが多い。これによって市場特性や顧客ニーズを探ったり、いろいろな問題を洗い出す作業などが低リスクで行えるためである。セルラーM2M市場に関しては、2016年からの6年間に年平均成長率35%という高い伸びが見込まれており、2021年には4億台程度のモジュール出荷台数に達するとの予測も出ているため、自社製品による安定した量産体制を確立する方向に舵を切ったという。

画像9:セルラーM2M市場予測(資料提供:u-blox)

また、これらのIoT/M2M向けチップ・モジュール製品の日本での販売開始時期については、CEOのThomas Seiler氏から「昨年発表した自社開発のM2M向け通信チップセットを世界中で使えるようにするため、いま準備を進めている段階だ。日本を含むアジア地域でも、だいたい来年には製品が市場に出回るのではないかという見通しだ」との説明があった。

なお、LTEは通信免許を必要とするライセンス系の規格であるが、同社ではこの他に、免許不要のアンライセンス系LPWA規格として「RPMA(Random Phase Multiple Access)」方式に対応したモジュールの提供も行っている。アンライセンス系では、「LoRaWAN」や「Sigfox」といった規格も注目されているが、これらについては現時点では市場成長性を見守っている段階だ。

日本市場への期待

画像10:u-blox CEOのThomas Seiler氏

u-bloxでは日本市場の特性についてどう考えているか。Seiler氏に質問したところ、やはり注目しているアプリケーションとしては自動車やIoTなどの分野があがった。

「日本市場には高い関心を持っており、また重要な市場だと当社では考えている。自動車分野のキーサプライヤーとは強い関係を築いているし、ビル管理ソリューション分野、IoT分野などにも注目している。企業向けのプロフェッショナルユースの製品に加えて、コンシューマ向けの分野がさらに面白いと感じている。コンシューマー向けというとセルラー関連製品ももちろんあるが、特に力を入れていきたいのはやはり自動車だ」(Seiler氏)

同社では、日本企業とのコラボレーションも積極的に行ってきている。最近では、パナソニックと共同開発したセンチメートル級測位が可能なRTK-GNSS技術を搭載したタブレット端末を発表している。また、三菱電機と提携し、準天頂衛星システム「みちびき」を利用したセンチメートル級測位補強サービスを提供するための自動車用受信チップの開発も行っている。三菱電機との案件については、2018年度からのサービス提供が予定されており、Seiler氏は「技術開発と製品化は順調に進んでいる。当初の予定通り製品提供を始められると思う」と説明した。

また、今後の日本企業との協業拡大の可能性についても、「日本市場は産業分野、自動車分野などで進んだ技術を持っており、活動量も多い。当社としては今後も、こうした分野での日本の顧客のニーズに応えていきたい。協業についての具体的なコメントは現時点ではできないが、いろいろな案件が進んでいる。必要に応じて協業関係は拡大していきたい」と話していた。