u-bloxはこのほど、スイス・タルウィル(Thalwil)の同社本社にて、アジア地域のメディア向けに事業説明会を開催した。また、同社社長Thomas Seiler氏への日本メディア合同インタビューも同時に行われた。本記事では、この説明会と社長インタビューの内容をもとに、同社の注力分野である自動車・IoT向け無線通信チップ・モジュール事業について説明する。

4つのIoT分野に注力した事業展開

画像1:u-blox CEOのThomas Seiler氏

まず、u-bloxの企業概要だが、1997年に設立され今年で創立20周年になるスイスの半導体メーカーであり、無線通信、衛星測位向けのチップ・モジュール製品をグローバルに提供している。2016年度の収益は3億6000万スイスフランで、従業員数は世界900名以上となっている。収益割合が最も高いセグメントは産業用製品で、全体の60%程度を占める。次いで自動車向けが30%程度、残りが民生向けという構成比になっている。顧客数は世界65カ国5700社に及んでいる。

無線通信のアプリケーションとして、スマートフォン・携帯電話市場はすでに成長が鈍化しており、市場規模は2022年に累計100億台弱で頭打ちになると予想されている。その一方で、IoT関連の市場は年平均成長率20~30%の高い伸びが見込まれる。そこで同社では、「広域および近距離のIoTアプリケーション」が今後の同社の注力事業であるとの方針を明確に打ち出している。

画像2:携帯電話とIoTの市場予測(資料提供:u-blox)

Seiler氏の説明によれば、同社が注目しているIoT分野には4つある。1つ目が「コネクテッドカー」であり、アダプティブ・クルーズ・コントロール(定速走行・車間距離制御装置)の出荷台数が2025年までに8000万台、トラック隊列走行システムが同年までに770万台、通信機能付自動車インフォテイメントが2020年までに2億4600万台といった予測が出ている。

2つ目は「コネクテッドシティ」であり、スマートホーム向け機器、在宅介護ロボット、通信機能付街路灯、スマートメーターといった分野でそれぞれ高い成長が期待されている。

3つ目が「コネクテッドインダストリ」で、ドイツなどで特に活発に研究が進んでいる分野である。その市場規模は、物品管理システムが2021年に56億ドル、ワイヤレス・センサ・ネットワークは2020年に10億ドル、通信機能付工業用コントローラが2014~2020年に3倍増(年平均成長率20%)といった予測が出ている。産業用製品はもともと同社の得意とするところでもあり、今後の収益の大きな柱として期待されていると思われる。

4つ目が「コネクテッドコンシューマ」といわれる分野で、スマホの無線通信機能を使ったスポーツ機器・ヘルスケア機器や、ウェアラブルデバイスなどが注目されている。

画像3:u-bloxが注力する4つのIoT(資料提供:u-blox)