節約のために夜行バスで移動。というのもひとつの選択だが、今日では安さだけを売りにせず、安全さはもちろんのこと、快適さやファッションにもこだわりのあるサービスを展開しているバスもある。そこで今回、 VIP LINER(VIPライナー)が展開している最上クラス「グランシアファースト」を実際に体験してみた。
全自動で145度のリクライニング
「グランシアファースト」はVIPライナーが考える最高のくつろぎを詰め込んだ、3列(1+2席の3列、最後部は独立3列)×7列の全20席仕様の高速バス。2017年7月現在は、東京駅・横浜駅を経由する大宮(埼玉県)=堺東(大阪府)間の夜行便に導入されている。
運行ルートは、23:30東京駅発/24:30横浜駅発=7:50新大阪着/8:30難波着、また、22:40難波発/23:40新大阪発=6:45横浜駅着/7:35東京駅着。つまり、乗車後はそのまま眠りにつき、目覚めとともに目的地に到着、ということになる。
このバスの一番の特長は、シートに飛行機のビジネスクラスと同じ仕様のバックシェルシートを採用していること。前後席の人に気を使うことなく、145度までリクライニングが可能。全自動ボタンにより、リクライニング・レッグレスト・フットレストを独立して稼働させることで、自分の身体にあわせて自由にシートをカスタマイズができる。また、アメニティーとして、大判ブランケットや腰ピロー、低反発ミニ枕、歯ブラシ、アイマスクを用意している。
寝返りの心配不要でぐっすり朝まで
縦7列のゆったり座席は足元も広く、それぞれの席には収納式のデスクと10.5インチの大型モニターが設けられている。モニターでは、テレビや映画、オーディオブックなど50以上のコンテンツも楽しめるので、睡眠前・寝覚めの時間も退屈せず過ごせるのがいい。また、車内は無線LANにも対応しており、デスクにPCを広げてちょっと仕事を、ということもできる。全席にUSBコネクタが設置されているので、携帯電話の充電不足も心配しなくていい。
実際に利用した所感として、通常、夜行バスの限られた空間では寝返りが打てず、夜中に何度も目を覚ますということも多いのだが、このグランシアファーストでは深く眠ることができた。革張りシートは座り心地もよく、何よりもゆったりとした空間なので、身体を自由に動かせるのがいい。映画が見られるというので、つい眠る前に見始めてしまったのだが、「続きは目を覚ましてから」と途中で切り上げることもできる。
荷物はひとり2つまで預けることができ、車内には頭上に荷物棚も設置されている。仮に棚に荷物を収納できなかったとしても、各席は十分にスペースがあるので、足元に荷物を置いたとしても窮屈にならない。運転は2人体制で行い、運転席との間には遮光カーテンが装備されている。そのため、光を気にせず快適に過ごすことができる。
出発前後は無料ラウンジへ
また、VIPライナーの利用者は、同じグループ内で経営しているラウンジ「VIP LOUNGE」を出発前・到着後に無料で使えるという特典もある。ラウンジは東京・新宿・名古屋・京都・大阪・難波にあり、中でも東京のラウンジ「東京VIP LOUNGE」は東京駅八重洲口から徒歩3分ということもあり、一般の利用者も多いという。
自由にくつろげるオープンスペースには電源やプリンターが備えられており、仕事場としても利用が可能。靴を脱いでくつろげる畳の空間も設けられている。コーヒーやお茶、お味噌汁等のフリードリンクのほか、東京ラウンジならではのサービスとして、約1,600冊の漫画が自由に楽しめる漫画コーナーもある。
パウダールームではドライヤーなど美容家電が無料で借りられるほか、化粧品も無料で利用できるというサービスも展開している。化粧品はシャネルなどの高級ブランドのものも取りそろえているので、ちょっと試しにという使い方も可能だ。加えて、フットマッサージも無料で使える。
その他ラウンジ内には、シャワールーム(500円/25分)、座敷個室(600円/1時間)や、ベッドコーナー1,000円/1時間~)などの有料サービスがあり、ネイルサロン「Lupinus」も併設している。あえて早めに到着して、ラウンジでゆっくり過ごすという選択もありだ。
一方、地下鉄御堂筋線なんば駅7号出口より徒歩約3分のところにある難波のラウンジ「VIPヴィラなんば」は、1~5階にまたがるコンパクトなつくりながら、デザインにこだわった空間となっている。女性限定のパウダールームのほか、お座敷ルームもあり、1日を始める準備を整えるのにもぴったりだ。
グランシアファーストを導入している大宮=堺東線の運賃は曜日や時期によって変動するが、2017年7月現在、片道5,000円台の時もある。時間の有効活用や快適なサービスも含め、コスパがいい選択と言えるだろう。なお、ラウンジ利用は時間やサービス内容によって料金が異なるので、詳細はホームページのほか、フロントスタッフに尋ねていただきたい。