もうすぐ夏本番! 海水浴やプールなど、楽しいイベントが盛りだくさんですが、そんな中で気になるのが、熱中症対策です。赤ちゃんや小さな子どもと一緒に外出する場合、どのような予防策が必要なのでしょうか。また、熱中症かどうかを見極めるポイントは? 小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。

抱っこ紐やベビーカーの中も危険! 乳幼児の熱中症、症状のサインと予防策(画像はイメージ)

Q.熱中症になるとどんな症状が出ますか?

熱中症は、人によって出る症状が異なります。よく見られる症状としては、頭やおなかの痛み、発熱、ぐったりして汗が出なくなる、嘔吐などがあります。

Q.赤ちゃんや小さな子どもは熱中症になりやすいと聞きます。なぜでしょうか?

赤ちゃんや小さな子どもは、体の中の水分含有量が多く、多くの水分を必要とします。しかし新陳代謝の良さから汗をたくさんかくため、必要な水分を補給できないとすぐに脱水状態になってしまいます。

さらに、体温調節機能が十分に発達しておらず、気温差に弱いため、熱中症になりやすく、重症化しやすいといえます。

Q.室内でも熱中症になりますか?

抱っこ紐の中で熱中症になったケースや、体育館で倒れてしまったケースなど、室内での熱中症も起こっています。室外ではなくても、高温の場所では注意が必要です。

Q.どんな対策ができるでしょうか?

こまめに水分補給をすることに尽きます。乳児の場合は、おっぱいやミルクの回数を増やしてみるのもいいと思います。無理に湯冷ましやお茶などをとらせる必要はありません。 また洋服は、汗を吸いやすい綿などの素材を選びましょう。ナイロンやジャージなど、汗がこもる素材は避けた方が無難です。帽子も必ずかぶせるようにしてください。

日のあたるところに長く出続けるのはやめて、こまめに日陰で休憩をとりましょう。首などの太い血管が通っているところに、保冷剤や冷たいタオルをあてると有効です。ベビーカーも地熱の影響などにより、かなり熱くなります。遮光性のあるものを選ぶ、背中に保冷剤を入れるなどの対策をしたうえで、長時間の外出は避けた方が良いと思います。

Q.「熱中症かな?」と思った時には、どのような処置が必要ですか?

まずは体を冷やすことが重要です。それから水分補給ですが、少量ずつイオン飲料などを与えましょう。脱水症状の時は体内のナトリウムが不足しているので、塩分を補う必要があるからです。ただし、熱けいれんが出ている時に水分を与えると誤飲してしまうことがあるので、注意が必要です。

Q.病院に連れて行ったり、救急車を呼んだりする目安はありますか?

判断を迷っている余裕はありません。子どもの意識がない、けいれんが出ているなど、様子がおかしいと思ったらすぐに救急車を呼びましょう。熱中症によって脳神経などに後遺症をもたらすこともありますし、生死に関わることもあります。

ご飯が食べられない、水分がとれない、ぐったりしていて活気がない、熱があるといった症状がみられる場合は、受診しましょう。

Q.特に赤ちゃんや小さな子どもについて、熱中症かどうかを見極めるポイントは?

いつもより睡眠をたくさんとる、嘔吐した、頭が痛そうな素振りを見せる、立ちくらみを起こしている、元気がない……これらの様子が見られる場合は、熱中症になっている可能性があります。

大人は自分で症状を訴えることができますが、子どもはなかなか正確に状況を伝えることができません。そういったことも、赤ちゃんや子どもの熱中症が重症化してしまう原因だと思われますので、大人が熱中症のサインを読み取ってあげられると良いですね。

※未就学児童の症状を対象にしています

竹中美恵子先生

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。