日野自動車の社長に就任した下義生(しも・よしお)氏が会見を開き、同社の今後や業界の見方について質疑に応じた。電動化や自動運転など、とにかく動きの多い昨今の自動車業界だが、乗用車に比べ、トラックやバスといった商用車の世界の方が、より激しく変化しそうというのが下氏の見立て。激動の時代を乗り切るためには、独自のアライアンス構築にも積極的に取り組むという。
幅広い経験、トヨタにも在籍
下氏はバスの設計から日野でのキャリアをスタートさせ、その後は商品の企画、開発、営業、販売といった幅広い経験を積んだ。同社が社運をかけて投入した北米専用のボンネットトラック「NAPS」ではプロジェクトリーダーを務めるなど、海外事業にも深く携わった経歴を持つ。日野の社長に就任する前は、トヨタ自動車に常務執行役員として在籍していた。
日野の社長として重視したいのは、車両の販売だけで終わらない「トータルサポート」体制の充実だという下氏。商用車は購入から買い替えまでの期間が長いので、その間も顧客のビジネスパートナーとして、しっかりと関係性を構築したいと豊富を語った。
トヨタで感じた危機感、ビジネスモデルの転換が参考に
トヨタ時代の下氏は、コーポレート担当として、グループとしての戦略やアライアンス構築などを見ていた。そのときに感じたのは、時代の変化に対してトヨタが抱く強烈な危機感だったという。
トヨタは2016年度こそ減益決算となったものの、収益レベルは依然として高い。そんな状況でも、従来のビジネスモデルから脱却し、自前主義から仲間づくりへと舵を切ったり、クルマの電動化に力を入れ始めたりするトヨタを、下社長は「危機感の塊」と評した。その姿勢からは刺激を受けたという。
トヨタがメインとして扱っている乗用車よりも、トラックやバスといった商用車のビジネスの方が「変化が激しくなりそう」というのが下社長の見立てだ。激動の業界にあって、トヨタのように危機意識を持ち、新しいことに取り組む姿勢は日野にとっても大切になるだろう。下社長はどのような「変化」を想定し、その変化をいかに乗り切っていく考えなのだろうか。