外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2017年6月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円相場6月の振り返り】
6月のドル/円相場は108.787~112.926円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.5%上昇(ドル高・円安)した。トランプ米政権のロシアゲート疑惑に絡んで行われたコミー前米連邦捜査局(FBI)長官の議会証言や、メイ首相率いる与党・保守党の苦戦が見込まれた英総選挙など、前半は「政治リスク」が意識されて弱含む場面が目立ったが、13-14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を境に流れが反転した。FOMCは、0.25%の利上げを決めた上に、年内あと一回の追加利上げとバランスシート縮小の年内開始を示唆。その後、欧州中銀(ECB)も年内に緩和縮小に動くとの観測が強まった事で(英、加は利上げを模索)、「金融緩和からの『出口』に最も遠いのが日銀」との見方が広がった。欧州債利回りの上昇を起点に米長期金利が約1カ月半ぶりの水準に上昇する中、ドル/円も同様に約1カ月半ぶりの高値となる112.926円まで上値を伸ばした。
【ドル/円相場7月の見通し】
足元でドル/円相場との高い連動性を見せる米10年債は、6月終盤に2.30%前後まで持ち直したが、依然として5月に付けた直近ピークの2.40%前後を下回っている。欧州債利回りの上昇につれて低下幅を縮小したとはいえ、肝心の米国景気に息切れ感が出ており、インフレ率が鈍化傾向にある事が重しとなっているようだ。7月相場において米長期金利とドルが一段の上昇を示現するためには、そうした重しを取り払う必要があろう。それができなければいずれも6月の上げ幅を吐き出してしまう事も考えられる。米連邦公開市場委員会(FOMC)が「(金融政策の)道筋は経済データ次第」としている事もあって、6月雇用統計(7日)はもとより、6月小売売上高や6月消費者物価指数(いずれも14日)、4-6月期国内総生産(GDP)・速報値(28日)などの経済指標の結果が重要な意味を持ちそうだ。なお、米金利先物市場では、年内に少なくとも1回の利上げ(0.25%)が行われる確率は5割前後となっている。いわゆる「五分五分」という状態で、追加利上げを織り込んで長期金利上昇とドル高が進む余地がある一方、利上げ見送り観測と失望のドル安が進む余地もあるという事になる。こうした中、7月のドル/円相場は年内追加利上げの可能性を探りつつ、米経済指標の結果に一喜一憂する展開が見込まれる。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya