オフィスビルが並ぶ福岡・天神のど真ん中に、ひっそりとたたずむ水鏡天満宮。そのすぐ横、わずか数十メートルの狭い路地には、コスパ抜群の福岡の名店がひしめいていることをご存じだろうか。どことなくディープな雰囲気をかもしだした通りでは、福岡のうまいものと楽しい夜が存分に満喫でき、地元で静かなブームとなっている。
昭和と平成が混在する通り
天神のランドマークとしておなじみの複合施設「アクロス福岡」の目の前にある、水鏡天満宮。学問の神様・菅原道真公が太宰府へ左遷される際、流れる川の水面に映った憔悴した自分の顔を見て、嘆き悲しんだといういわれにちなんで建立された、由緒ある神社だ。
その横に位置する「博多名物うまかもん通り」には、博多の鯖、牛タン、とり天など、さまざまな名物をそろえた個性豊かな名店がずらりと並んでいる。
4~5年前あたりから、ちらほらお店が入れ替わり、天神から少し離れた場所にあった人気店の姉妹店が相次いで出店。以前は50代くらいのサラリーマンが集まるシブめの居酒屋が多かったが、最近は30~40代と客層が若くなってきている。昭和の香りただよう居酒屋と、こじゃれた店が混在する独特の雰囲気を持った通りだ。
うまい! 安い!! アットホームで開放的な空間
いずれも予約が取りづらい人気店ばかりだが、この日私が訪れたのは、福岡の鮮魚居酒屋・磯貝がプロデュースする「海鮮角打イタリアン じゃこくじら」。約4年前のオープン当初から話題だったが、現在も週末や平日の早い時間は予約が難しい。人気の秘密はなんといっても、鮮度の良い鮮魚や素材を低価格で提供していることだ。
ウニやイクラ、ホタテにアワビ、フォアグラを使っていても、1皿の価格は700円前後と良心的。スタッフみんなが仲良しで、アットホームなサービスが心地良い。店内もイイ感じに狭く、隣の人とも会話が弾みそうなほど、温かく、開放的な雰囲気が広がっている。
オマールエビをはじめ、新鮮な旬の魚介がずらり。福岡の台所・長浜鮮魚市場で仕入れたウニやイクラを使った「長浜カルパッチョ イクラぶっかけーの」「長浜カルパッチョ ウニぶっかけーの」(共に734円)も見逃せない! |
「うちはこの狭さを楽しんでほしい! ふらっと来て、ワインを飲んで、気持ちよく帰っていただくのが理想です。丁寧なサービスはできませんが、親切であけっぴろげな雰囲気の店です」と語るのは、オーナーの田中紀行さん。
もちろん九州近海の新鮮な鮮魚がオススメだが、最近人気が高いのは肉料理なのだとか。しかも女性客からの圧倒的な人気を誇っていて、中でも「豚骨のカリカリ焼き」(626円)、牛ホルモンのトマト煮込み(778円)は、必ずオーダーするそうだ。
豚足や牛さがり、ホルモンといった福岡らしい素材を、イタリアンで軽くおいしくアレンジした一皿を目の前にすると、「ワイン」(グラス410円)がゴクゴク進む。そして、「うに山盛りパスタ」(950円)、「いくら山盛りパスタ」(950円)、どちらも食べたい人は「うにといくらハーフ&ハーフ」(1,058円)など、パスタでシメるのがこの店のお約束となっている。
福岡のディープで楽しい夜を
20時過ぎ頃、この通りを歩くとどの店からも笑い声が聞こえてきて、こちらも楽しい気分になる。店舗の入り口を開放しているお店が多いからだ。
「ここは都会の真ん中なのに、どこか田舎の路地裏に迷い込んだような雰囲気がありますよね。この通りの雰囲気と立ち飲みスタイル、そして仲間たち。それらがみんな融合してこの店が成り立っています。後は、お客さまに新鮮でおいしいものを出すだけです」(田中さん)。
当初は男性客をターゲットにして店舗プランを立てていたというが、実際には現在、女性客が半数以上を占めるそう。舌の肥えた福岡女子が集まるのは、この通りの各店に共通している現象かもしれない。
博多駅行きのバスがとまるバス停や、地下鉄天神駅の出入り口も近く、通りを抜ければライトアップされた重要文化財・福岡市赤煉瓦文化館を見ることができる。ぜひ、福岡のディープな楽しい夜を過ごしていただきたい。
●information
海鮮角打イタリアン じゃこくじら
所在地: 福岡市中央区天神1-15-3
営業時間: 17~26時
定休日: 不定休
※価格は税込