説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、『今後、快適な写真撮影にはiPhoneの買い替えが必要?』という質問に答えます。
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「今後」とは、2017年秋の公開が予定されているiOS 11以降という意味でしょうか? そうだとすると、答えは半分Yesで、半分Noです。iOS 11では静止画/動画を効率よく保存できる新フォーマット「HEIF」が導入され、あわせて高いデータ圧縮効果を期待できるコーデック「H.265/HEVC」が静止画にも利用されるようになるため、高い処理能力を持つハードウェアが要求されるからです。
コーデックとは、画像や音楽などのデジタルデータをあるルールに沿ったデータ形式に変換するソフトウェアです。あるデータ形式から他のデータ形式に変換する処理を「エンコード」、オリジナルに戻す処理を「デコード」といい、エンコードする際にはデータ量が少なくなる圧縮効果を得られることが一般的です。
H.265/HEVCは、これまでiPhoneの動画処理において中心的な存在だった「H.264/MPEG-4 AVC」の約2倍という圧縮性能を持つコーデックです。iOS 11では静止画にも利用されるようになり、現在主流の形式(JPEG)と比べても約2倍の圧縮効率がありますから、同一品質の写真が約半分のデータ量に収まることになります。
しかし、H.265/HEVCの高い圧縮効率は、複雑な演算処理と表裏一体の関係にあります。実際、iOS 11でHEVCにより画像をエンコード(新フォーマットで写真を撮影)できるのは、「A10 Fusion」を搭載したiOSデバイスに限られます。デコード(新フォーマットの写真を表示)はそれ以前のチップを搭載したiPhoneでも対応しますが、表示速度やバッテリー消費量においては、A10 Fusionより新しいチップを搭載した機種のほうが有利でしょう。
iOS 11が正式リリースされないことには、体感レベルの差があるかどうかは断定できませんが、新フォーマットで快適な写真撮影を行おうとすると、より新しいiPhoneのほうが有利といえそうです。