ドラマCDシリーズ『ホテル・ヒルサイドベイ』発売記念イベントが、6月11日、アニメイト横浜イベントスペースにて行われた。出演者は、長谷影辰役の中尾隆聖、と鴻上礼智役の豊永利行。
『ホテル・ヒルサイドベイ』は、ブロッコリーが、『神々の悪戯』、『薄桜鬼』などで知られるイラストレーターのカズキヨネとタッグを組み、「おじ様と若者」をテーマにした四章からなるドラマCDシリーズ。横浜の港町に佇むクラシカルなホテルを舞台に、そこで働くベテランと若手の従業員達の交流を描く。今回のイベントは、まさに物語の舞台である横浜で開催された。
場内が暗転すると、ドラマCD内で使用されるジャジーなテーマソングをBGMに、中尾と豊永が登場。まずは朗読劇からイベントがスタート。中尾が演じる影辰はホテルに長く勤めるベテランのバーテンダーで、豊永が演じる礼智は20代の新入りウェイターという設定になっている。影辰が開店準備をしているバーに礼智が現れ、ホテルの日常がうかがえるやりとりが行われる。お腹を空かせた礼智に、野菜スープとサンドウィッチを振る舞う影辰。代わりに礼智は影辰に紅茶を淹れる。影辰が紅茶の香りを楽しみ一息つこうとする場面では、こちらまで紅茶の香りが漂ってくるように思えた。ホテルの世界に引き込まれ、ゆったりとくつろいだ気持ちになれるのがこのドラマCDシリーズの魅力だ。
朗読劇が終わり、フリートークへ。中尾が「こういうトークイベントは慣れなくて。今日は君が頼りです」と、MCの豊永に言うと、「いやいや、こんなに光栄でハードルの高い現場ないですよ!!」と、大ベテランと同じステージに立つプレッシャーを告白した。
豊永は、作品づくりの現場を「もう33歳になりますけど、自分が下から2番目で、あとはみなさん大先輩という現場は初めてでした」と振り返る。すると、中尾は「僕は人間役をやるのが久しぶりだったね! しかもこんなにいい男」と言い、会場の笑いを誘った。
また、芝居の役作りについて「俺は直感的に作っていきたいんですけど結局、計算で作ってしまうんです。隆聖さんの役づくりは?」と、豊永が質問すると、中尾は「僕は自分からかけ離れたキャラクターの方が作りやすい。そういう意味で、影辰は“理想の人”というイメージだったので作りやすかったですね。僕はおしゃべりなので、口数が少ない影辰さんとは全然違う」と笑った。
続いては、来場したファンからの質問に答えていくコーナー。「二人の考える理想のホテルは?」という質問に、二人とも大きなホテルよりは「ホテル・ヒルサイドベイ」のようなこじんまりとした場所の方が好きだ、と回答しつつも、自分で旅行する際はホテルより旅館派とのこと。「情緒がいい」、「布団や食事が部屋に用意されているところが好き」など、旅館の良さを二人で話し合ううちに「いいね! あぁ、旅館行きたくなってきた!」と中尾がノってくると、「じゃあ『ホテル・ヒルサイドベイ』第五章は、旅情編ということでスタッフみんなで旅館に泊まりに行きますか!」と、豊永から想定外の続編アイデアが飛び出した。
また、「どうしてもウマが合わない苦手な人とは、どう付き合っていけばいいのでしょうか?」というファンからのお悩み相談に、中尾は、声優養成所の講師として生徒たちにも話しているという、こんなアドバイスを披露する。
「生徒の中には、講師の私とどうしても合わないと感じる子もいると思うんです。でも、嫌いな人こそ学ぶところが多いんだよね。好きな人というのは、自分が理解できる考え方をしている。でも、嫌いな人って自分とは違う考え方をしているから嫌いなんですよ。だから、嫌いな人に対しては、その人の何が嫌いか考えてみると、その人に対してまた違った見方、接し方ができるようになります」。
そんな中尾の金言に、豊永もため息をつきながら納得。豊永も、「苦手な人を避けていると、そんな自分が嫌いになってしまうんです。だから、あえて苦手な人と接してみて、どうしてこの人が嫌いなのかを分析してみるんですよ。そうすると、実はどこかでちょっと調子に乗ってた自分に気付けたりします」と中尾の意見に同意した。
中尾曰く「どうしても人と接して疲れてしまう時は、切り替えられるスイッチをどこかに持っておくといいよね。私なんか、すぐ雪山に行ったり温泉に行ったりしちゃう」と、気晴らしすることをアドバイス。トークは徐々にヒートアップして行くが、中尾が突然「……ってこの話、面白くないか」と突然話をやめてしまうと、豊永が「自分の話をあきらめないで!」と、すかさず突っ込み。二人の軽妙なやりとりに、収録で培った関係性が感じられた一コマであった。
最後は再び暗転し、朗読劇の後編が披露された。「大したもんじゃないよ」と、礼智が影辰へストールをプレゼントする。影辰から食事やマフラー、それ以外にも様々なものをもらった、という礼智の感謝の気持ちが詰まったプレゼントだ。そんな二人の心の交流に、影辰の「このホテルではあたたかい気持ちになってほしいですから」というセリフの通り、見ている側もあたたかい気持ちになる。
名残惜しくもここでイベントは終幕。豊永は「隆聖さんとイベントに出演させていただくなんて、本当に貴重な機会を頂けて嬉しかったです。キャスト一同、また続きがやりたいよねと話していますので、これからも引き続き応援よろしくお願いします」と続編への期待をうかがわせるコメントを残した。最後のプレゼント抽選会では、ポスターなどのグッズとともに、『ホテル・ヒルサイドベイ』らしく二人のサイン入りカクテルグラスがファンへプレゼントされた。
働く男性達のリアルな人間ドラマと、くつろげるホテルの雰囲気に癒される『ホテル・ヒルサイドベイ』。第四章まで全て発売中だが、続編の発売を願わずにいられないイベントであった。