課題は多いが、収穫も多い
ヤフー マーケティング&コミュニケーション本部 クリエイティブ推進部 デザイナーの北門一人氏は「音声読み上げを利用すると、HTMLの構造で実装時には気づかなかった課題が多く存在した。来年は、より完全な状態に近づけたものを構築し、以降も継続的に進めていく。また、特集に限らず、ほかのサービスへの展開も検討しており、検証を重ねつつ取り組む」と、期待を込める。
今回の検証について中野氏は「アクセシビリティは本来、サイトの品質基準の中で取り組まなければならないが、そこに着目した結果、一定の改善が見られた。また、例えばメニューボタンには『近日公開』と記載されていたが、ボタンには代替テキスト情報が付与されていなかったため分からないということがあった。何回にもわたり、更新していくページを構築する際には、代替テキストの更新が見落としがちであることを見つけることができた」と話す。
さらに「HTMLでWebページを作成する際に、見出しやリストといった要素でページの構造をマークアップするが、ページの構造がどのような形で使われるか作成者がイメージできていないケースがある。そのため、ページの構造化を行っているものの、読み上げると適切ではないこともあり、作成者側の課題である。また、アクセシビリティとユーザビリティを高めることは違う要素ではあるものの、オーバーラップしている部分もある。アクセシビリティを高めることが、ユーザビリティを高めることにもつながえる場合がある」と、同氏は読み解いていた。
支援される側から支援する側へ
一方で、視覚障がい者はWebページを閲覧する際に、ある程度ITの知識が必要となることも事実だ。その点に関して中根氏は「例えば、HTMLに見出しを表現する仕組みがあることを知っているのか、知らないのかでは違いがある。そのため、視覚障がい者がインターネットなどを使う際に最低限必要となる知識を明確化することに取り組まなければならない。技術的知識を持つ視覚障がい者を中心に組織化し、情報提供やニュースサイトの利便性を技術的な観点から取りまとめた要望を運営会社などに提出していきたいと考えており、教育・啓発活動にも取り組めるようにしていく」と、今後の展望を述べた。
そして、同氏は今回の検証を通じ、特に感じたこととして「ともすると社会的に障がい者は支援の対象であり、支援する側に回れないと考えている人が多いが、特集ページを閲覧することで積極的に障がい者が参加できる環境があることが、社会の多様性を考えた場合に大きな意味があった」と、最後に締めくくった。