先進各国の内需は成熟しきっており、新たな消費市場を求めて多くの企業が国外に打って出ている。そのターゲットは中国、ASEANと広がってきた。特に近年はASEANの市場開拓が進むが、中でも未だ開発が端緒に就いたばかりのベトナム、ミャンマーが、新たな有望市場として注目されていることをご存じだろうか。
そのような状況にあって、ついにセブン&アイ・ホールディングスがベトナムはホーチミンシティに「セブン-イレブン」の第1号店を開いた。日本のコンビニがベトナムに進出するのは、ファミリーマート、ミニストップに次いで3番目となる。
セブン-イレブンの出店が象徴するように、日本企業がベトナムに熱視線をおくる背景とは何なのか。わかりやすいデータとして、世界的に消費者市場の調査を手掛ける英調査会社ユーロモニターが今月に入り、ASEAN主要6カ国における人口や平均年齢等のデータを公開している。
なおデータはいずれも2016年までが実績値、2017年以降が予測データとなっている。
まず、ASEAN主要6カ国の人口について。ベトナムの人口は2017年現在では、約9,500万人と6カ国中3番目に多い。日本の人口が1億2,673万人(総務省統計局より 5月1日現在)であることを考えると、これだけの人口規模は消費市場として見逃すわけにはいかない。平均年齢も若く、人口は、今後も増加し続けることが予測されている。
平均年齢で言えば、ベトナムは2017年現在、31.2歳と非常に若い。46歳を超えるともいわれる日本の平均年齢とは比べるまでもないだろう。すでに約9,500万人の人口を抱え、平均年齢も若いことから、労働の質の高さ、消費意欲の高さ、市場拡大の有望さで期待が大きいのだ。
コンビニの例でいえば、現時点ではタイ、インドネシア市場の成長が目立っているものの、ユーロモニターの予測する市場規模の推移では、ベトナムは2021年、2017年現在より約240%の成長が見込まれるという。
※市場規模の値は、コンビニコーヒーやレジ横で売っているようなファストフード類は含まれない。2016年の年間平均為替ルートをすべての都市に適用しており、為替の影響は省く。実績値についてはCurrent(インフレ込み)、予測値についてはConstant(インフレなし)を使用。
また、コンビニ数の変化を見てみると、こちらも市場規模の変化と同じような傾向がみられる。ベトナムにおける小売店舗へのニーズは、いつか爆発する潜在力を持つと見るのが自然だろう。
セブン-イレブンの今回のベトナムへの進出は、これからの同国の成長余地を見越してのことだ。セブン&アイ・ホールディングスは、今回の開店に伴い、同国における流通近代化と顧客の利便性向上を図り、将来的なフランチャイズ展開も視野にいれているという。
近年、東南アジアのフロンティア各国は急激な経済成長を遂げている。ベトナムは政治情勢等の影響から、ASEANに加盟したのが比較的遅く開発が遅れていた。だが平均年齢の若さ、さらに人口の多さからその市場としての価値は非常に注目されており、今回のセブン-イレブンの進出は、同国の経済的成長を象徴的に裏付ける。
そして、世界中の小売り企業が進出してくるだろう中で、マーケティングやサービスなども含めて、日本ならではの特色を持つ「コンビニ」がベトナムで勝てるのか。日本企業の世界での競争力を測るうえでも、象徴的な出来事となるかもしれない。