人間総合科学大学健康栄養学科の奥田奈賀子教授らの研究グループはこのほど、ナト・カリ調味料(ナトリウム/カリウム比が低い塩、しょうゆ、みそ)を調理に使うと、尿中ナトリウム/カリウム比が低下することを明らかにした。

実証研究の流れ

日本における高血圧の人の割合は、30歳以上の成人の場合は約4割で、高齢者では半数を超えるという。高血圧の予防には、食塩(塩化ナトリウム)の摂取量を減らす減塩が大切だが、薄味でおいしくない減塩食は続かなかったり、がまんして減塩したりしている人が多いのが実情であるとのこと。

高い血圧を降下させる作用のあるものとして、カリウムが挙げられる。カリウムは野菜や果物に多く含まれるが、日本人の摂取量は不足気味。そこで、ナトリウムを減らしカリウムを補う「ナト・カリ塩(ナトリウム/カリウム比調整塩)」が注目されているという。

ナト・カリ塩は、食塩(塩化ナトリウム)のナトリウムの一部をカリウムに置換して製造する調味料のこと。一般調味料と同じように使っても、ナトリウム摂取量を減らし、カリウム摂取量を増やす一挙両得の効果があるという。カリウムには穏やかな塩味があるため、一部をナトリウムと置換しても、食塩本来の塩味と大きな違いはないとのこと。

今回、ナト・カリ塩の継続的な使用で、血圧にどのような変化がみられるか、岩手県矢巾町在住の町民33名の協力を得て1カ月間の実証研究を行った。最初の2週間にナト・カリ調味料(塩、しょうゆ、みそ、めんつゆ)を使い、次の2週間は一般の調味料を使用。それぞれ後半の1週間に毎日尿検査を実施し、尿中のナトリウム/カリウム比を測定した。

その結果、普通調味料使用中は平均3.96であったが、ナト・カリ調味料使用中は平均3.28に低下した。この尿検査結果の変化は、高血圧の人では最大血圧2.3mmHgの低下、正常血圧の人で1.1mmHgの低下に相当するという。ナト・カリ調味料を継続して使用することで、食生活はそのままで高血圧予防が期待できるとのこと。

実証研究の結果

協力期間終了後の聞き取り調査によると、ナト・カリ調味料を使った料理は、普段の食事と味が変わるなどの不都合はなかったと全員が回答したという。実証研究で効果を確認した商品は一部商品化されており、まもなく全商品が実用化される予定。