かの『枕草子』で三名泉にもカウントされているほど長い歴史を持つ有馬温泉(兵庫県神戸市)には、泉質の異なる数種の源泉が湧いている。そのうちのひとつが日本では珍しい炭酸泉で、温泉として楽しまれている他、有馬発祥の炭酸飲料であるサイダーにも活用されている。のみならず、なんと炭酸泉が焼き菓子にまで利用されていたことをご存じだろうか?
焼き方が違う2種類の食べ比べも
菓子の名は「炭酸煎餅」。もともと炭酸泉源の炭酸泉を利用して焼き上げていたことからこの名がついた。現在は衛生上の理由でその水は使用していないものの、炭酸水を用いているのはネーミングどおり。炭酸水特有のパチパチ感とは打って変わり、実際はさっくりとした仕上がりになっている。
ただし、バターや卵、添加物を一切使わず、身体に優しいお菓子に仕上げている点は昔と変わらず。生地に圧力をかけてできるだけ薄く焼き上げているため、小さな子どもや年配の方も食べやすく、お土産やお見舞品としてもぴったりだ。
ちなみに現在では、炭酸煎餅発祥の店・三津森本舗では、ベーシックな炭酸煎餅は手焼きと自動機焼きとの2タイプが販売されている。手焼きタイプは一枚の鉄板で圧力を掛けて一気に焼き上げるのに対して、自動機タイプは機械に生地を流してゆっくりと焼き上げていくのだとか。
でき上がりの違いについて店舗に尋ねたところ、「見た目での違いはありませんが、食感は手焼きの方がさっくり香ばしく感じると思います」とのこと。2つを食べ比べてみるのも一興であろう。
手焼きを眺めながらの街歩きも
さらに、2枚の炭酸煎餅でチョコレートクリームやバニラクリーム、ストロベリークリーム、抹茶クリームをサンドした「クリームタンサンセンベイ」、白胡麻を練り込んだ「白胡麻入りタンサンせんべい」、青海苔たっぷりの「青海苔入りタンサンせんべい」などのヘルシーなラインナップもそろう。
いずれも1枚が薄くさっくりとしているので全種類制覇も軽々。有馬温泉を訪れた際には、煎餅片手に温泉街を闊歩(かっぽ)するのも楽しいに違いない。
ちなみに、商品は全て三津森本舗のECサイトでも購入可能だが、築120年を超える趣いっぱいの店舗建物は、一度は見ておいて損はなし! 店内では煎餅の手焼き作業が行われているが、店が建つ湯本坂からも店内サロンからも眺めることができるので、散策の合間にここで一服してみては?