生理前や生理中になると、夜に十分な睡眠をとっていても日中に眠くなるという女性の声をよく聞きます。なぜこの時期には、多くの女性がいつもより眠気を感じるのでしょうか? 原因と対策をお伝えします。
主な原因はホルモン分泌による体温の変化
生理前や生理中に眠気が強くなるという現象には、ホルモンバランスの変動が関係していると考えられます。
女性の体と生理周期は、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)と、プロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンによってコントロールされています。生理前の約2週間にあたる時期を「黄体期」と呼びますが、この時期にはプロゲステロンの分泌が急激に増えます。プロゲステロンには体温を上昇させる働きがあるため、この時期には普段より体温が上がります。
性別にかかわらず、人間の体は体温が下がると眠くなり、逆に上がると目が覚めるようにできています。したがってプロゲステロンの分泌が多く、体温が高い黄体期には夜になっても体温が下がりにくく、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりしてしまうのです。生理前になると日中でも眠気が出やすくなるのは、このためです。
また、そもそもプロゲステロン自体に、眠気を誘発する働きがあるといわれています。プロゲステロンの分泌が多い時期は、黄体期から生理スタート前後くらいまで続くのが一般的。そのため、生理前から生理中にかけて眠気を訴える女性が多いのでしょう。
まずは、自宅でできるセルフケアで対処
では、どうすれば日中に眠気が起こりにくくなるのでしょうか。対策としては、夜によく眠れるように環境や体の状態を整えることが重要です。まずは次の方法を試してみましょう。
・規則正しい生活を心がける
夜ふかしせず、毎日できるだけ決まった時間にベッドに入るようにします。日中は太陽の光を浴びて体をよく動かし、昼夜の区切りがしっかりついた生活を送りましょう。
・寝る前にテレビやスマホを見ない
薄型テレビやパソコン、スマートフォンなどのディスプレーが発するブルーライトは、睡眠を妨げるといわれています。ベッドに入る2時間前くらいからは視聴を避けるようにしましょう。
・寝る前にお風呂に入る
寝る前に体温を上げておくという意味では、入浴も有効です。就寝する1時間くらい前に熱すぎないお湯につかって体を温めておくことで、ベッドに入ったときに自然に体温が下がりやすくなります。もちろん、体がほぐれてリラックスできるというメリットもあります。
眠気が改善されない場合は病院へ
女性が生理前や生理中に多少の眠気を感じるのは自然なことです。ただし、起きていられないほどの異常な眠気を感じる場合は、生理前のホルモンバランスの変化によって起こっている可能性もあります。眠気を含む生理前のさまざまな不調を「PMS(月経前症候群)」と呼びますが、婦人科ではPMSに対して、症状に応じて低用量ピルやホルモン製剤、鎮痛剤、漢方薬などを処方する治療も行っています。今回ご紹介したセルフケアを試しても眠気がおさまらない場合や異常な眠気がある場合は、一度婦人科で相談してみましょう。
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記事監修: 星合明 医師
星合勝どきクリニック 院長
1986年獨協医科大学・医学部医学科卒業。1992年獨協医科大学大学院卒業。同年獨協医科大学付属病院産婦人科臨床助手。1994年より獨協医科大学産婦人科教室非常勤講師。その後、文京区星合産婦人科病院副院長を経て2001年2月より、東京都中央区勝どきにて「星合勝どきクリニック」を開設、医長を務める。