適応障害は、五月病や六月病とも呼ばれる

適応障害にはどのように対処すればいいのだろうか

新年度の4月がスタートしてから1~2カ月が経過した今ぐらいの時期になると、五月病または六月病といったフレーズを耳にする機会が増えてくるのではないだろうか。五月病や六月病にかかると、疲れやすくなったり、やる気や食欲がなくなったりするといった症状を呈するようになる。だが、これらは正式な病気ではなく、医学的には適応障害と診断されるケースが少なくない。

本稿では、ウィメンズヘルスクリニック東京の院長・浜中聡子医師の解説をもとに、この五月病や六月病と呼ばれる適応障害になりやすい人の特徴や、その対策をまとめた。

真面目で自分に厳しい人がなりやすい傾向

浜中医師によると、心身の不調を訴える人は5月や6月に急激に増えるわけではなく、通年で一定数の患者が存在するという。ただ、5~6月は環境が変化した4月からの疲れが出やすかったり、気候の変化が激しくて体に負荷がかかりやすかったりする。心身に影響を及ぼす因子が重なりやすい背景がある点は確かなようだ。

そういったストレス因子の積み重ねが適応障害を誘発するわけだが、なりやすさに個人差はあるのだろうか。浜中医師は「環境に対して過剰に適応しようとする人」が適応障害になりやすいのではないかと解説する。

「生真面目で自分に厳しく、一生懸命に自分を周囲に合わせていい評価を得ようと考える人の方が自分を追い詰めやすいです。最初は気を張って頑張っていられるんですけれど、その状態は持続させられません。どこかで無理が来ます。その兆候が出始めてくるのが5~6月ということで、五月病や六月病といった名称ができたのではないでしょうか」

自らのストレス反応を知ることの大切さ

適応障害になったらまずは休息を

適応障害の治療にあたっては、症状がよほどひどくない限り、安定剤や睡眠導入剤といった薬を用いることはない。まずは休息をとり、心身面の充足を図る。

そのうえで「確かに現状の自分に今の仕事は厳しいかもしれない。ただ、学生時代も難しいレポートに粘り強く向き合って課題を解決してきた。だから、今回もきっと頑張れる」などと、前向きに今の状態を受け入れつつ、自分の置かれた環境に順応・適応させていくのが理想だという。

しかし、この治療法は時間を必要とするし、必ずしもうまくいくとは限らない。そのため、適応障害への最大の対策は「自らのストレス反応を知り、適応障害になるのを未然に防ぐこと」だと浜中医師は指摘する。

「ストレスフルな状況下でどのような症状が出るかは個人差があります。頭が痛くなる人もいれば、原因不明のアレルギー症状が頻発する人もいます。また、便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群になるといったこともあります。体質的な問題が関与していることもあるので、過度なストレスがかかったときにどういった心身の不調が出やすいかを知っておいたほうがいいですね」

※写真と本文は関係ありません


記事監修: 浜中聡子(はまなか さとこ)

医学博士。北里大学医学部卒業。ウィメンズヘルスクリニック東京院長。米国抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会専門医などの資格を多数取得。アンチエイジングと精神神経学の専門家で、常に丁寧な診察で患者に接する。