メディア、広告、ゲーム事業と幅広い分野の事業を手がけているサイバーエージェント。変化の激しいネット業界を生き抜いてきたパパ社員たちは、家族との時間をどのように作っているのだろうか。そして、子育てや夫婦関係で悩んでいることは?
男性の生きづらさについて研究する「男性学」の第一人者、大正大学の田中俊之准教授が職場を訪ね、パパたちのお悩みを聞いてきた。
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左から、Neri Marschik(ネリ・マーシック)さん、伊達学さん、大正大学 田中俊之准教授、小出亮太さん |
「夫婦で話し合いたい」と思うけれど……
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田中:
早速ですが、お悩みを聞かせていただけますか。
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小出:
イヤイヤ期の2歳児、授乳やオムツ替えが必要な0歳児と2人の娘がいて、子育ての大変さがピークです。一方で、新しい事業の立ち上げ時期で、仕事もがんばらなければならず、毎日早い時間に帰宅し、一緒に育児や家事をするのはなかなか難しくて……。妻を孤独に感じさせてしまっているのではないか、1人で大きな負担になっていないかというのが悩みです。
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小出亮太さん(33)
0歳、2歳の女の子のパパ。同社のインターネットテレビ局「AbemaTV」で編成宣伝に従事している。妻は産休中で、時短勤務で職場復帰予定。
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小出:
結婚、妻の妊娠、家の購入など、ライフイベントが立て込んでいたこともあって、家計や育児、お互いの働き方などについて、しっかりと時間をとって話せる機会が少なかったことも反省点です。もっと将来のことを話し合う時間をとらなければと思います。
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田中:
話し合いは大事ですよね。ただ、話し合ったからといって全ての問題が解決するわけでもないところが、難しいと思います。例えば、お互いの働き方などは、相手の希望する働き方と、自分自身が可能な働き方が、もしかしたら違うかもしれません。
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小出:
妻は「働きたい」という思いが強いので、1人目出産後も職場復帰しました。ただ今は、産休中で仕事もできませんし、昼間、友人などと話す機会も少ないようです。第1子の時にできたママ友も、ちょうど職場復帰している時期みたいで。
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「妻とゆっくり話せる時間が作れていない」と語る小出さん |
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ネリ:
僕の妻も一緒です。子どものいる友人は1人しかいないようだし、その友人にも毎日会えるわけじゃない。長い時間出掛けることも難しい。だから、週末は絶対に家族と出掛けるようにしています。……正直、平日仕事をしている僕は、ゆっくりしたい気持ちもあるけれど、もし彼女の立場だったら僕も大変に感じると思うから。
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Neri Marschik(ネリ・マーシック)さん(30)
0歳児を育てるパパ。エンジニアとして活躍している。妻の産後は1カ月の育児休業を取得。ドイツ出身。
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伊達:
私の妻は専業主婦なのですが、子どもが3人いるので、習い事や学校のことなど、考えるポイントがたくさんあり、夫婦で話し合う時間が必要だと感じます。ただ、夜の会食が週4日ほどコンスタントにあるので、平日は、妻と一緒に食事ができるのが週に1日というのが現状です。
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伊達学さん(37)
2歳、5歳、8歳の女の子のパパ。広告代理店事業でスタッフ部門の責任者を務めている。
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伊達:
時間の使い方は悩みどころではあるのですが、今年から金曜日の夜は妻と過ごすと決めました。金曜日に飲み会の予定を入れてしまい、土曜日が二日酔いだったりすると、家族との予定が狂ったりしてしまうので……。
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田中:
家族にとっても、お父さんが早く帰宅する日が固定されていると、予定が立てやすいですよね。
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伊達:
妻と2人でお酒も飲むようにしています……2人で急に素で話すのがちょっと恥ずかしいなという思いもあり(笑)。金曜日にすると次の日が休みなので気が楽ですし、いろんな話ができて、今のところいい習慣だなと思っています。
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田中俊之さん: 大正大学 心理社会学部 人間科学科 准教授。社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。自身も1歳児の子どもを持つ育児中のパパ。単著に『男性学の新展』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか! 』、共著に『不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか』などがある |
"子育てより仕事の方が楽"は真実!?
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田中:
ネリさんは1カ月、育児休業を取得されたんですよね。どうして取得しようと思われたんですか?
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ネリ:
僕は、妻が里帰り出産するのが嫌でした。最初の1カ月は僕も赤ちゃんと一緒にいたいし、毎日会いたいじゃないですか。ただ、妻は1人で赤ちゃんのお世話をするのは大変だと言ったので、「僕が休みをとって一緒に過ごしたらいいんじゃない?」と提案したんです。
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赤ちゃんと一緒にいたくて育休を取得したというネリさん |
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田中:
ドイツでは、里帰り出産があまり一般的ではないのでしょうか?
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ネリ:
出産後、1週間は産院にいて、すぐに赤ちゃんが家に来ます。一般的にお父さんがお休みをとっている印象で、実際に僕の友人も、1カ月くらい休みをとっていましたね。
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田中:
1カ月の育休はいかがでしたか?
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ネリ:
出産後、退院して赤ちゃんが家にやってきたとき、この小さい子をどうしたらいいんだろう、自分がやっているお世話は正しいのかと、毎日ドキドキしました。でも、夫婦で24時間一緒にいたからお互いすぐに相談できたし、安心でした。僕が仕事に行っていたら、妻は相談できずに不安な思いをしたのではないかと思います。
妻は子どものお世話と授乳、僕は買い物したり掃除したりオムツを替えたりしていました。仕事から離れることで、僕自身もリラックスできたので、良かったです。
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田中:
ネリさん自身にとっても、良い経験だったのですね。
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ネリ:
子どものお世話に慣れることができたので、その後の生活がすごく楽になりましたね。
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田中:
みなさんはどうですか?
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小出:
2人目の時には、妻のお母さんが来てくれたので、育休は取得しませんでした。僕が育休を取ったら妻はうれしいんだろうなと思いつつも、お母さんが来てくれるんだったら仕事をがんばった方がいいのかなという気持ちになりました。妻も、お母さんが来てくれるなら、僕には仕事をしてほしいという思いがあったようですし……。
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田中:
日本の場合は、諸外国と比べても、男女の賃金格差が大きいので、多くの家庭で、夫が働いた方が世帯収入が多くなると考えざるを得ないですよね。奥さまのお母さまも、娘や孫の暮らし向きを考えれば、小出さんに仕事をがんばってほしいと考えるのが、現実だと思います。
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ネリ:
それは会社じゃなくて、社会の問題ですよね。
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田中:
個人の努力では、解消が難しい問題だと思います。それを個人の努力で何とかしようと思うと袋小路にはまってしまうというか……。奥さまとの対話だけで解決できる部分もあるし、社会が変わってくれないと解決できない問題もあると思います。
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「個人と社会で解決できる問題は異なる」と田中先生 |
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伊達:
ただ育休に関しては、会社的に男性が取得できないというより、その人自身が取るという選択をしない可能性もあるとは思いますね。子どもをみていたいという純粋な思いの一方で、1週間家事や育児をやるよりは、仕事をしていた方が楽だなぁって思っている男性は多いんじゃないかな……。
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ネリ:
僕の場合は、楽しいからエンジニアをやっているけど、1日中子どもの世話をするよりは、楽かもしれないと思いますね。
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伊達:
もちろん、仕事も育児もそれぞれに異なる大変さはあると思うのですが、それは子どもの年齢によっても変わるなと思います。子どもが小さい時の子育てがフルで大変だとすると、例えば今上の子が8歳なのですが、だいぶ関わり方が変わってきて楽になっている気がします。主で子育てをしているのは妻なので、僕がこんなことを言える立場にはないのですが……(汗)。
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伊達さんは「子どもが成長するにつれ、関わり方が変わってきて楽になる」と語る |
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田中:
ただ、「8歳になると子育ては楽になる」という言葉は、乳幼児のお子さんを育てている人にとって、希望ですよね。
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小出:
朗報だと思いました。
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夫にも妻にも1人の時間を
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田中:
仕事で抱えるストレスと、家庭で抱えるストレス、そのはけ口をみなさんはどうされていますか?
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小出:
はけ口……ですか? 元々、ストレスを感じづらいというか、強いてあげるなら何でも楽しむこと。子どもと遊ぶことも、遊ばなきゃと思うのではなく、童心に返って一緒に楽しもうと思うことで、ストレスをためないような考え方を意識していますね。
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ネリ:
はけ口というと、難しいですね。妻も一緒だと思うけれど、僕の一番の悩みは、自分だけのプライベートの時間がないこと。本を読んだり、友だちと会ったりする時間を作るのも難しい。帰宅して、ご飯を食べて、子どもをお風呂に入れて、寝かしつけて……気づくと22時。疲れきって本も読めないです。
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伊達:
週末は目一杯予定を入れたいタイプなので、家族で過ごすのは楽しいのですが、部屋にこもりたい時、誰とも話したくない時ってあるじゃないですか。そういう時に子どもが部屋に入ってきたりとか、妻からぼそっと「私にはそんな時間はないけどね」と言われたりすると、そうだよなぁと思いますよね……。
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ネリ:
どんなに社交的で外出が好きな人でも、本当にリラックスできるのは、1人でいる時だと思います。
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田中:
その点については、解決策があると思っています。例えば私たち夫婦は、毎週日曜日を、午前中は僕、午後は妻が出掛ける日と決めました。子どもが小さいと難しいかもしれないのですが、息子が1歳を過ぎたので、先月から始めています。
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伊達:
それはいいですね! その時、奥さまは何をされることが多いんですか?
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田中:
友だちと会ったり、1人で買い物に行ったり、髪を染めに美容室に行ったりしています。すごくリラックスできるので、夫婦それぞれに自由な時間、1人の時間を作ることは、とても大切だと思いました。
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まずはパパ同士で家族の話をしよう
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田中:
みなさんそれぞれに工夫があって、悩みがちな子育て中のパパにとって、とても参考になる座談会だったと思います。ポジティブな会になりましたね。
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小出:
早速、平日の夜は週に1日でも、妻と話す時間を作ろうと思いました。みなさんの話がすごく参考になりました。
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伊達:
座談会にあたって、これまでの子育てを振り返ったり、会社で子どもの話ができたりしたのが、とても良かったなと思いました。ネリが「赤ちゃんと1カ月一緒にいたい」と言っていたのを聞いて、僕もそんな気持ちを持っていたなと思い出し、より家族に優しくしたいなと思いました。
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ネリ:
職場に子持ちの人はたくさんいますが、これまであまり子どもや育児の話をしたことはなかったので、2人の話を聞けて面白かったです。これからもっと、こういうことができればいいですよね。パパ飲み会とか、いいんじゃないでしょうか。
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田中:
会社の中で、パパ同士が話をすることで、子育ての参考にしたり、悩みを解消したりするって、とても素敵ですよね。今後そんな機会があれば、ぜひまたお邪魔させてください。
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