運送業界は、かつてない危機を迎えている。急速に伸びる需要に対し、人手が確実に足りていない。昨今では、そんな危機に対応しようと「AIによる荷物の自動判別」や「自動運転技術によるトラックの隊列走行」等、異業種企業まで巻き込む、さまざまな解決策の模索が始まっている。
6月8日、新たにこの課題解決に挑んだ企業による実証実験の結果報告があった。パナソニックエコソリューションズの、宅配ボックスを用いた「再配達」の減少を目指す取り組みだ。
本実験は「働く世帯応援プロジェクト」を推進する、福井県あわら市で行われた。2016年10月18によりモニター募集を開始し、11月中にモニターを106世帯に決定、宅配ボックスを設置した。その後12月1日より実証実験を開始し、2017年3月31日の4か月間の宅配便の配達状況についてモニター世帯にアンケート調査を行った。下図は、回答をもらった417世帯のデータを集計したもの。
これにより、宅配ボックスを設置したことで再配達率が49%から4カ月平均で8%に減少したことがわかった。これは、約222.9時間の労働時間の削減、約465.9㎏の二酸化炭素削減に相当する効率化だという。
本実証実験を終え、あわら市は「社会問題化しつつある課題の解決に、全国の自治体に先駆けて関わることができ大変有意義であった」と述べる。また、実証実験を行ったパナソニックは「繁忙期のみならず、約半年間にわたっての定点観測においても劇的な結果が出たことにおいて、再配達解消の1つの商材であることが実証できた」と、手ごたえを感じている様子だ。
昨今、宅配ボックスの需要は急激に増加している。パナソニックは今年3月、商品の受注が通常月の5倍になったと発表していた。同社の最終的な目標は、「住まうすべての建物に宅配ボックスを設置」することだという。今回改めて、宅配ボックスの有用性が確認された。設置する人が増え、再配達率が減少すれば、運送業界の課題解決に効果が期待できる。