COMPUTEXにおけるAMDの発表会の様子はすでにお伝えした通りだが、正直なところあまり新しい情報はなく、単に公開済みの製品について「スケジュールが確定した」という以上ではなかった。しかし、発表会後にラウンドテーブルを開催し、Exectiveに細かい話を聞くことができた。お相手いただいたのは、James Prior氏(Photo01)とJohn Taylor氏(Photo02)である。話自体は別々に聞いたのだが、テーマがほぼ重複しているので、まとめて内容を紹介したい。

Photo01:Product Manager, Client solutionsのJames Prior氏

Photo02:Corporate VP, Worldwide MarketingのJohn Taylor氏

Ryzen Mobile - TDP15W製品に注力、デスクトップ向けAPUも予定

まずはRyzen Mobileから。説明会での写真はいささか小さかったのだが、実物はこんな感じ(Photo03,04)。

Photo03:たまたま10円玉しか持ち合わせていなかったので、寸法の基準はこちらで。ちなみに直径23.5mm

Photo04:裏面。Ballの山である

横の10円玉と比較すると、

  • パッケージサイズ:約37.3mm×約25.5mm
  • ダイサイズ:約21.7mm×約10.2mm(いずれも撮影した写真からの実測)

となる。ダイサイズはおおよそ221平方mmとなる計算だ。KabyLakeのダイサイズはおよそ183平方mmと推定したが、それよりも2割ほど大きくなる計算である。ただ原価という意味では、Intelの製造プロセスは他社(TSMCとかGlobalFoundriesなど)と比較して割高になるといわれており、そこから考えるとRyzen Mobileの原価はそう大きくKabyLakeと変わらないと想像される。

このRyzen Mobileであるが、現在はTDP15Wの枠に収めるものに注力しているという(Prior氏)。Zenコア+VegaのAPUということは明かされているが、いま時点でGPUのCompute Unitsがどの程度かといった詳細については公開できないという。ただ、あくまでも15WのTDP枠に向けた構成になっていると説明する。

これは何を意味しているかといえば、AIO(オールインワンデスクトップ)などにも利用できるかもしれないが、Ryzen MobileはノートPC向けの製品であるということだ。そしてデスクトップ向けのSocket AM4のパッケージとして別の構成を予定しているそうだ。

これは要するに、もう少しVegaのCompute Unitsを増やしたものということであろう。さらにまだ詳細は説明できないとしながらも、Ryzen Mobileとさして変わらない時期に、グラフィックを統合したRyzenベースのデスクトップ向けのAPUも投入される事をPrior氏は示唆した。

ThreadRipperについて - 16コア以外の製品も予定

ThreadRipperはEPYCと異なり、2ダイの構成であることがPrior氏から明言された。(Photo05,06)また機械的なパッケージ形状はEPYCと同じだが、電気的には

  • EPYC:SR3
  • ThreadRipper:SR3 Rev.2

で異なっており、互換性はない、というのがPrior氏の説明である。

Photo05:OPNは"ABCDEFGHIJKLM"だし、そのその下には"1234567MZ0001"なんてあるように、現時点でのシルク印刷は単なるダミー。ただその上の"1641PGS"というのは1641 contactの意味であろうか?(ちょっとPhoto06で数える根性がなかった)

Photo06:寸法は82mm×62mm(実測値)。巨大である。2つに分かれた信号ピン中央のパスコンの配置が左右で異なってるのがちょっと不思議

もっともEPYCとThreadRipperでは信号線の数が異なる(DDR4は8ch vs 4ch、PCI Expressは128 Lane vs 64 Lane)から、互換性がないのは当然でもある。そんなわけでEPYCのボードにThreadRipperを装着したり、あるいはその逆の構成をやっても(そうした構成に意味があるかどうかとは別に)動作しないという話だった。

あとうっかり確認し忘れたのだが、EPYCは外部のチップセットが不要という話で、対するThreadRipperはX399チップセットの組み合わせとなる。実際にはX399はPCI Expressの先に接続される形になると思われるので、その意味では変わりがないといえばないのだが、一応このあたりも両者のピンの違いということになるだろう。

ところでThreadRipperが搭載するコアについて"Up to 16 core"と説明されているので、当然のことながら派生型が考えられる。これについては「Ryzenと同じように、2バージョンある」という話だった。もっともそれが16coreと14coreなのか、16coreと12coreなのかは今回明らかにされなかった。

TDPについては、かつてのAMD FX-9590のように220Wに達することはなく、「もっと常識的な数値だ」というのがPrior氏の返事であった。恐らく140W程度に収まると思うのだが、具体的な数字は特に示されなかった。

もう少し先の話について、まずIntelのOptane Memoryをどう思うかPrior氏に聞いたところ「良いアイディアだが高価だ。Optane Memoryを使うのと、512GBのSSDを使うの、どっちがいいと思う?」と返ってきた。また、IntelのThunderboltのプロトコル公開については、「もし本当にプロトコルが無償で公開され、かつその利用にロイヤリティが不要ということになれば、OEMベンダーが興味を持つとは思う」との返答だった。