Intelは、COMPUTEX TAIPEI 2017初日となる5月30日に開催されたe21Forum 2017において、"Experience the data driven future"と題した講演を行い、この中で"Basin Fall"(開発コード名)として知られていたX299プラットフォームと、これを使うCore-Xシリーズプロセッサを正式発表した。
Core-Xシリーズに先立って触れられたのが、第8世代のCore iシリーズの存在(Photo01)で、こちらは第7世代と比較して30%以上高速であり、ホリデーシーズンには(OEMベンダーから)出荷されると説明された。
常識的に考えれば、その前にCPU自体の出荷は始まっていないとまずいので、おそらくは10月あたりにこの第8世代の出荷が始まるのではないかと思われる。
非常に余談であるが、5月24日にIntelは"Thunderbolt 3 Everywhere"というプレスリリースを出しており、この中で"Integrate Thunderbolt 3 into Future Intel CPUs"(将来のIntelのCPUにはThunderbolt 3が入る"としていた。
そこでJason Ziller氏(Director of Thunderbolt Marketing)に「Future Intel CPUというのは第8世代のCore iシリーズのことなのか、それとももっと先の話なのか?」を確認したところ、「もっともっと先の話だ」という返事であった。少なくとも第8世代には入る可能性はないようだ。
話を戻すと、講演を行ったGregory Bryant氏(Photo02)は、このハイエンドシリーズの製品が、すべてXで終わる型番になることを示し(Photo03)、さらにシリーズの中に最大18コアの製品が含まれることも明らかにした(Photo04,05)。
会場では実際に、12core/24threadのプロセッサを使ってのVRシステムの稼動状況を示し(Photo06)、VR/MRなどのシステムではまだまだこうした多数のコアを集積した製品が必要であることをアピールした。
RYZEN ThreadRipper対抗で18コア製品を急遽投入
会場での話はこの程度だが、同時にプレスリリースも出ているので、もう少し詳しい内容についてもレポートしたい。まず、新しいラインナップはCore i5/Core i7/Core i9の3種類が用意され、さらにCore i9の最上位としてExtremeがポジショニングされる形になる(Photo07)。
製品の特徴をまとめたのがPhoto08だが、年始のPCテクノロジートレンドで紹介したように、基本はKabyLake、あるいはSkylake-EPのコアを新しくLGA2066のパッケージに収めたものである。
このうちSkylake-EPの方は、5月4日にアナウンスしたXeon Scalableをそのまま流用する形である。想定外だったのは、当初の計画ではCore i9/Core i7として導入するのはLCC、つまりXeon Silver向けのコアで最大でも12コアだったのが、MCC(Xeon Gold相当)の最大18コアまで用意していたことだ。
実際Photo06でも12コアのデモを行っているあたりに、当初の名残が伺える。それを急遽18コアまで拡充したのはAMDが2017年夏の投入を予定するRYZEN ThreadRipperの存在であることは疑問の余地がない。かくしてハイエンド向けにMCC(Xeon Gold相当)のコアを投入することになり、そのトップ製品が18core/36threadのCore i9-7980XE(Photo09)というわけだ。
従来モデルからの変更点
そのSkylake-EPコアだが、従来世代からさまざまな変更が加えられていることも明らかにされた。まずは「改良版」のIntel Tubrbo Boost Max 3.0(Photo10)だ。
従来のTurbo Boost Max 3.0は「1コア稼動時には、システムの中で最も性能が出しやすいコア1つを利用する」ものだったが、今度は2コアの場合にもこれが適用されるようになったそうだ。
2つ目は筆者の記事の間違いの訂正である。Xeon Scalableの紹介でで"Xeon PlatinumがHCC(22~28core)、Xeon GoldがMCC(14~22core)、Xeon SilverがLCC(10~12core)"と書いたが、そのMCCを利用するCore i9-7980XEのフロアプランが今回公開された(Photo11)。
これを見るとMCCは最大18コアに設定されているようだ。つまりXeon Scalableは「Xeon PlatinumがHCC(20~28core)、Xeon GoldがMCC(14~18core)、Xeon SilverがLCC(10~12core)」というのが正しいようだ。
最後にCacheだが、実はこれが最も大きな変更である(Photo12)。Intel CPUは従来、伝統的にInclusive Cacheの構成をとっていた。これがSkylake-X世代で大きく変わった。
まずMLC、つまりL2キャッシュの容量が従来の256KBから1MBに大きく増量された。こうなると、L3をInclusiveのままに置くにはかなり大容量化しないと意味がない。
ところがダイサイズには限りあるから、そんな巨大なL3を実装はできない。かくしてLLC、つまりL3キャッシュをコアあたり1.375MBに削減し、Exclusive Cacheの構成に切り替えた。なぜここまでしてL2を1MBに増やしたかったのか、いまの時点で判断できないが、これは性能にもそれなりの影響がありそうである。
X299プラットフォームの特徴
さて、Core-Xに対応するチップセットについては、事前情報通りX299が投入される(Photo13)。当然ながらOptane Memory readyとなっており、またIntel i219をサポートするあたりが主だった差別化要因といえるだろうか?(Photo14)。
Photo14:Intel i219は別に10GbE対応というわけでなく普通のGbEであるが、IEEE1588(Time Precision Ethernet)に対応しているのが従来製品との違い。もっとも一般家庭でこれがメリットになることはあまりないと思うが |
製品ラインナップがこちら(Photo15)である。4コアの下位2製品のみがKabylake-Xで、後は全部Skylake-Xとなる形だ。プラットフォームの比較がこちら(Photo16)である。
なおCPUクーラーは、引き続きTS13Xが推奨されている(Photo17)あたり、ソケットのピン(というか、Land)数は違っているがクーラー取り付け金具とかソケット周りの寸法などには変更がなさそうだ。
すでに多くのメーカーが今回のXシリーズ対応製品をリリースしている(Photo18)とのことだが、もうすでにX299搭載マザーのレポートが上がっているからこれはご存知のことだろう。ちなみに基調講演の中ではこのほかにもトピックがあったので、こちらも別にレポートしたい。