続いて、樋口氏はAIを導入するにあたっての留意点を紹介した。これまで、さまざまな企業のコンサルティングを行う中で得た、AI導入における失敗のパターンとして、以下のように、典型的な例を4つ挙げた。

  • 目的なしにAIの導入の検討を開始した
  • 必要なデータがない、もしくは、データの質が低い
  • AIで目的を実現できるが、投資対効果に見合わない
  • 従業員の協力を得ることができない

こうした失敗パターンを踏まえ、AI導入を成功させるためのポイントとして、以下の4点が紹介された。

  • プロセス全体を見て、AIの導入先を決定する
  • 第1世代か第3世代までのAI技術を織り交ぜて、適材適所で使う
  • ルール化隅のタスクはIT、経験則が必要なタスクはAIといったように分担する
  • 人間とAIの違いを理解する

人間とAIの違い

「顧客接点」「業務高度化」「複合高度分析」の領域でAIを開発

さらに、樋口氏は同社のAIの開発と活用について説明した。同社は開発を行う上で、NTTグループのAIブランド「corevo」の下、「顧客接点」「業務高度化」「複合高度分析」の3つの領域に重点を置いている。

NTTグループのAIブランド「corevo」

NTTデータがAIの開発において重点を置いている3つの領域

顧客接点の領域においては、「応対業務に必要な知識量の増大についていけない」という課題解決に向けて、AIの開発に取り組んでいる例が紹介された。「この課題はよくお客さまから言われること。毎年、新しいサービスが出る企業では、その違いを覚えきれず、適切な対処ができなくなっているので、AIで解決することを目指す」と樋口氏。

この課題を解決する技術として、コードネーム「conceptron」が開発されている。この技術は、ユーザーの質問の意図を理解して、正確な回答を支援するものだ。

同技術のポイントは、「音声を正しく認識できる」「多様な言い回しを理解して、正確な回答を支援できる」「語彙の意味体系の精度が高い」だという。

コードネーム「conceptron」の仕組み

業務の高度化については、ホワイトカラー業務を仮想知的労働者で自動化する「RPA(Robotic Process Automation)」の適用を推進している。導入例として、加盟店審査支援システムにおいて、審査に必要な情報を自動で収集する仕組みが紹介された。

複合かつ高度な分析については、医療機関において患者の状態悪化を予兆検知するソリューション「Smart ICU」が紹介された。同ソリューションにおいては、患者1人当たり毎秒数千点の測定データを分析することで、症状が悪化する予測モデルを開発、予測に基づいたアラートをリアルタイムでドクターに提示する。

これまで行った実証実験では、8割から9割の確率で急病を予測できたとのことだが、樋口氏は「生命に関わるソリューションである以上、残りの2割を解決しなくてはならない」と述べた。

樋口氏は今後の展望として、「AIの進化によって、人間が失業するという報道もみられるが、AIによって人間ができることが増え、それによってビジネスが進化すると考えるべき」という見方を示した。