子どもの小学校進学に際し、やはり気になるのは放課後事情。学校内や近くに設けられた学童保育で過ごすのか、はたまた民間の学童・習い事を活用するのか、子どもたちの居場所を確保するのに四苦八苦している親は多いだろう。
このほど放課後NPOアフタースクールなどが開催した「放課後子ども総合プラン勉強会」では、日本総合研究所の主任研究員で、諸外国の学童保育の仕組みに詳しい池本美香さんが、その取り組みについて語った。日本とは異なる世界の放課後事情を紹介しよう。
オーストラリアではスタッフの犯罪歴などをチェック
まず紹介されたのは、イギリスの事例だ。イギリスでは、学校の中に学童保育が設けられていて、高学年の子どもが利用していたり、家庭的学童保育があったりするなど、多様性が重視されているという。
「興味を持って調べたのは、質をきちんとチェックする仕組みです」と池本さん。どの施設にも外部評価が入り、その結果はウェブサイトで公表される。さらに住民の生活道路を通行止めにし、遊び場として使えるようにする取り組みがあるなど、街全体を放課後仕様にしていく動きが広まりつつあるとのこと。
「親の働く時間を短くして、親子が過ごせる時間を長くしようという取り組みもあります。夏休みは仕事しないとか、平日"この時間は働きません"とか、子どもの状況に合わせて親が働き方を交渉する権利を持っていることに驚きました」。全体として、子どもにとってふさわしい放課後がどういうものか、考えられているという印象を持ったそうだ。
そしてオーストラリアでは、"学童保育は子どもたちが主体"という考え方が、国としてしっかり打ち出されているという。池本さんは、「学童保育に行かなければならない、ルールに従わなければならないという考えではなく、みんなでその場所の使い方やルールが決められるというのが指針として出されている」と語った。保育施設や学校も含め、スタッフは全て、犯罪歴などのチェックがかけられているのも、大きな特徴となっている。
多様な居場所がある北欧諸国
さらに北欧諸国でも、放課後の取り組みは進化を見せている。スウェーデンでは、学校と学童保育の一体的運営が進められ、学童保育の運営は指導要領にも位置付けられているとのこと。ノルウェーでも、学童保育は学校内にあり、校長が責任者になっているという。
ノルウェーで興味深いのは、学童保育が9歳までという点だ。「10歳になれば、自分たちでどういう風に過ごすか決められるし、治安が良く、街の中のプールや森へ遊びにいけるようになっているので、学童が必要ない」と池本さん。フィンランドでも、公園にスタッフが配置されていたり、図書館でパソコンが自由に使えたりと、さまざまな場所で子どもたちの居場所が用意されているそうだ。
宿題は弊害!?なドイツと、各施設の活動が充実しているフランス
日本では「保護者が家にいない子どもに放課後支援が必要」という考え方が強いが、フランスでは「親が子どもにとって束縛になる」という考え方があるそう。そのため、"子どもたちが保護者と離れたところで集団的余暇を過ごす権利を保障する場所"として、施設が整備されているのだとか。さらに、環境問題やアートなど、専門家のスタッフ・教材を集めた「リソースセンター」があるため、各施設の活動が充実しているという。
また、宿題の弊害について議論のあるドイツでは、宿題によって子どもが勉強嫌いになり、学校に行くのが嫌いになるという意見があるとのこと。「宿題は出すべきではなく、授業の中で学力を上げるべきという考え方がある」。日本のように、宿題を重ねて学力を詰め込んでいくという傾向はあまり見られないようだ。
最後に池本さんは、「子どもの権利条約をベースに放課後のあり方が考えられていて、安心安全が徹底されているほか、子どもや親は意見を表明して決定に参加できる。遊びの権利をはじめとした幅広い子どもの権利を実現しようという動きが世界にはある」と総括。「最も重要だと思うのは、教育担当の省庁が学童保育を所管するケースが増えてきていること。子どもにとってどういう形がいいのか、(学校と学童保育を別々に考えるのではなく)一元的に考えるというやり方が広がってきている」と所感を述べた。
子どもにとってベストな放課後とはどんなものなのか。子どもたちを一番に考えた放課後環境を整えることが、日本でも求められている。