6月中旬から7月中旬頃にかけて、箱根の山を登る箱根登山鉄道の沿線は、紫陽花(あじさい)の花で彩られ、この季節の箱根登山鉄道は「あじさい電車」の愛称で親しまれている。今回は「あじさい電車」に乗って、6月にリニューアルオープンする日帰り温泉施設や、"自然薯(じねんじょ)とろろ"のランチが楽しめる食事処、そして、梅雨時に最も花の多い時期を迎える「箱根湿生花園」などに立ち寄りながら、梅雨時の箱根路を散歩しよう。
箱根の温泉を日帰りで
東京都心から箱根に向かうには、新宿駅と箱根湯本駅の間をおよそ1時間20分で結ぶ小田急ロマンスカー「はこね」号が便利だ。「はこね」号は新宿駅=小田原駅の間は小田急線、小田原駅=箱根湯本駅の間は箱根登山鉄道の線路を走る。
小田原駅を過ぎ、いくつかの駅を通過すると、線路は次第に山と山に挟まれた谷間へと分け入って行く。やがて、左手の車窓に早川の渓流を見ながら、ロマンスカーはゆっくりと箱根湯本駅のホームへと滑り込む。
箱根湯本駅に到着したなら、まずは途中下車して、日帰り温泉施設に立ち寄ってみよう。今回、立ち寄る「箱根湯寮(ゆりょう)」は、観光客でにぎわう箱根湯本の温泉街ではなく、里山の風情が味わえる静かな山あいにあり、箱根湯本駅から無料送迎バスが運行されている。
山あいにあるとは言え、大浴場を始め、19室もの貸切個室露天風呂や、食事処、リラクセーションまで用意された、大規模な施設だ。「箱根湯寮」は、2017年5月8日から31日まで、施設のクリーンナップと設備のメンテナンスのため休館している。運営する小田急リゾーツによれば、6月1日に今まで以上に快適かつ質感をアップして、リニューアルオープンするとのことだ。
リニューアルを記念して、6月1日には先着100人にオリジナルスパバッグのプレゼントがあるほか、「リニューアルオープン記念ランチ」の提供(6月1~7日)、サウナでのフィンランドの入浴方法「ヴィヒタロウリュウ」の体験(6月24~30日)など、様々なイベントが行われるので、ぜひ、訪れてみてほしい。
●information
箱根湯寮
住所: 神奈川県足柄下郡箱根町塔之澤4
営業時間:平日10:00~21:00、土休日10:00~22:00
定休日:無休(2017年5月8~31日まで休館)
登山電車道中、シャッターチャンスを逃すな!
日帰り温泉を堪能したら先へ進もう。「箱根湯寮」からは、実は登山鉄道の塔ノ沢駅が近く、徒歩5分ほどだ。送迎バス停車場の奥に「塔之沢温泉のご案内」という看板が出ているので、矢印に従って坂を下り、その先の分岐を右に進み、しばらく渓谷沿いの林道を歩いていくと駅舎が見えてくる。
塔ノ沢駅へ通じる道はこの林道が唯一で、国道へ出るには林道を200mほど歩かなければならない。まるで"秘境駅"のような駅と言えよう。また、この駅の箱根湯本方面のホームに面して、「深沢銭洗弁財天」という、ホームからしか境内に入れない神社がまつられているのも珍しく、面白い。
さて、塔ノ沢駅から強羅(ごうら)行きの電車に乗り込むと、すぐにトンネルに入り、トンネルを抜けた先には、素晴らしい絶景が待っている。その絶景とは、早川の渓流の上に架かる通称「出山の鉄橋」からの眺めで、水面までの高さが43m、谷の幅はおよそ60mあるといい、その上を登山電車がコトコト走っていく。鉄橋に差し掛かる前に車内アナウンスがあるが、意外とすぐに渡りきってしまうので、シャッターチャンスを狙うなら、早めにカメラを準備しておいた方がいい。
さて、ここから先、登山電車は3回のスイッチバックを繰り返しながら、斜面を登っていく。車内にいるとあまり感じないが、箱根登山鉄道は傾斜角が最大の場所では80パーミル、つまり1m走る間に80mm、12.5m走る間に1mも登る急勾配を走っているのだ。
それ以上の坂は真っすぐ登れないため、運転手と車掌が前後の運転台を交代しながら、アルファベットのZの字を描くようにして登っていくのが、スイッチバックだ。途中の大平台駅は、2度目のスイッチバックが行われる場所に位置するため、上り電車も下り電車も同じ方向に出発していくのが面白い。なお、登山鉄道沿線ではこの大平台駅付近が、最も紫陽花の株数が多いという。
さて、大平台駅の次の宮ノ下駅で登山電車を降りよう。宮ノ下駅から徒歩10分ほどの場所に、オススメのランチが食べられる店がある。