トーマツ イノベーションはこのたび、「職場の働き方調査」の結果を発表した。同調査は人材育成研究の専門家である東京大学大学総合教育研究センターの中原淳准教授との共同プロジェクト「女性の働くを科学する」の一環として実施されたもの。
調査期間は3月、回答者は企業に勤めるワーキングマザー、ワーキングマザーの上司(管理職)・ワーキングマザーの同僚(一般社員)・ワーキングマザーの配偶者・パートナー計2,000名。
就業意向は高いが両立に悩み
今の会社での就業継続意向を聞いたところ、「働き続けたい」と回答したワーキングマザーは71%で、男性社員(49%)や女性社員(49%)を上回った。一方、仕事と育児の両立については多くのワーキングマザーが悩んでおり、「うまく両立できている」と考えているワーキングマザーは36.8%にとどまった。
仕事と育児の両立に奮闘しながらも成果を出しているワーキングマザーの働き方(成果につながる働き方)について調べたところ、1位「一般社員の仕事の負荷状況や得意な仕事を把握し適切な人に仕事を頼んでいる」、2位「時間内での仕事の効率を高める努力をしている」、3位「職場の仲間に協力してもらえるよう積極的に働きかけている」となった。
中原准教授は「成果を出しているワーキングマザーは『自ら頑張るモード』と『他人を頼るモード』で成果を出す」と分析している。
しかし「ワーキングマザーは仕事の効率を高める努力をしているか」という問いについてワーキングマザーとワーキングマザーを部下に持つ管理職、ワーキングマザーの同僚に尋ねたところ、ワーキングマザーは38.6%が「効率を高める努力をしている」と回答したが、管理職は21.2%、同僚は21.4%にとどまった。
また「ワーキングマザーはできる限り仕事を前倒しにしているか」という問いについてもワーキングマザーは27.2%が「している」と回答したが、管理職は15.2%、一般社員は13.0%と、認識に差があることがわかった。
「仕事の負荷状況や得意な仕事を探し、適切な人に仕事を任せているか」という問いに「あてはまる」と回答したワーキングマザーは8.6%、「職場の仲間に協力してもらえるように働きかけているか」は10.0%にとどまった。
中原准教授はこれらの結果を受け、「成果を上げるために行動が必要だとはわかっているが、浸透していなかったり実施できない環境にあったりするかもしれない。睡眠を削ることは成果にマイナスの効果があるが、人が最初にやってしまうことでもある。本人の素質や個人の努力だけでは無理があるため、ワーキングマザーにも頑張ってもらうが、それを支える職場環境を作らなければならない」と提言している。
成果を出すワーママはどんな上司の下で働いている?
ワーキングマザーがキャリアの行き詰まりを感じたり、見通しのなさを感じたりする管理職の行動の1位はいずれも「長時間労働を評価する行動」となった。
ワーキングマザーの成果を支えるための管理職の行動について、「助け合いを評価しているか」という問いには管理職の51.8%、ワーキングマザーの36.4%が「している」と回答した。また「責任ある仕事を任せている」は管理職は50.0%、ワーキングマザーが46.6%、「職場の負荷を見える化している」は管理職が37.8%、ワーキングマザーが23.4%だった。
仕事に充実感を持っているワーキングマザーの職場の特徴は1位「仕事を抱えているメンバーの手助けをする」、2位「目標達成の雰囲気がある」、3位「お互いに競争意識をもっている」という結果になった。
同社と中原准教授は「責任ある仕事を任せることについては管理職とワーキングマザーの評価が同程度となったが、職場を動かすことについてはワーキングマザーからの評価が低く、管理職による更なるアクションが期待される。またワーキングマザーの活躍できる職場は男女問わず理想的なチームとも考えられるため、女性活躍推進に限らず管理職が取り組むべき課題といえる」と分析している。
また、トーマツ イノベーション代表取締役社長 眞崎大輔氏は調査結果に対し「2015年に女性活躍推進法が施行されてから、人材育成の現場でも『女性活躍』がキーワードとなった。女性活躍推進は政府がすすめる『働き方改革』とつながっている。働き方改革そのものはとらえどころがないかもしれないが、実現には女性の視点と女性の活躍が重要だと調査で明らかになった。女性の活躍推進をどう捉えてどう取り組むか、経営者には戸惑うところがあるかもしれない。そのような人たちにもいい結果を提供できると思う」と述べている。