気持ちが沈んでいるときに、気分転換として汗をたっぷりかき、嫌なことを忘れたという経験を持つ人は少なくないはずだ。ただ、運動嫌いな人にとっては、精力的に体を動かすことは心理面でのハードルが高い。そんなときは、運動の代わりにショッピングをするのがいいのかもしれない。
海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど、「散歩と気分転換」にまつわるコラムが掲載されたのでその内容を紹介しよう。
気分転換として体を動かす際、実はそこまでハードにする必要はない。科学者たちは、ショッピングセンターでのウィンドーショッピングといった軽い運動でも精神が高揚すると提唱。また、毎日散歩をするといった軽度の活動をする人の方が、そうでない人より精神的満足度が高いということが判明した。そして、ジョギングのようなハードな運動よりも、気軽に散歩をする方が気分転換になるという。
「今回の研究によって、重い腰をあげて少し身体を動かすことで主観的満足度が高まるという、重要な公衆衛生上のメッセージを人々が理解してもらえればと願っています。身体を動かすことがあまり好きでない人にとっての朗報は、満足度を高めるために激しい運動をする必要がないということです。私たちの研究で示しているように、軽度か中度の活動が『最も効率的』なのです」とコネティカット大学の大学院生であるグレゴリー・パンザ氏は語る。
今回の研究では、健康な成人419人の腰に加速度計をつけてもらい、4日間にわたり身体活動の記録をとった。さらに参加者には日々の運動習慣や精神的満足度、気分が滅入る度合い、痛みの度合い、痛みが日々の活動の妨害になる程度をアンケートで記述してもらった。
その結果、座っている時間が長い人は主観的満足度が低く、最も不幸ということだった。主観的満足度とは、人々が自分自身の生活に対して下す肯定的または否定的評価のことを指す。一般的に、身体活動によって人々の満足度は改善されるが、データを詳細に調べたところ、軽度の身体活動をする人は精神的満足度が高く、抑うつレベルが低いとの結果が得られた。中程度の身体活動をする人も同様に精神的満足度が高く、痛みの度合いが低かった。そして、あまり身体を動かさなかった人が軽度か中程度の身体活動を行うと、満足度が最も上がったという。
「身体運動の度合いと主観的満足度の関係という点からすると、『激しい運動の方がよい』という固定観念は間違っているかもしれません。目的が主観的満足度を高めるということであれば、『どのような運動でも構わない』という姿勢の方がいいのです」とパンザ氏は話している。
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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。