アデコは5月17日、上場企業に勤務する40代から50代の管理職(部長職・課長職)309人を対象に、「AI(人工知能)時代に求められるスキル・能力」について調査した。その結果、「対人関係力」と「創造力」が重要だと捉える人が多いことが分かった。
自社におけるAIの導入状況について質問したところ、AIを導入している企業は6.8%とまだ低いものの、28.8%が「3年以内に自社でAIを導入する予定がある」と回答。また、88.7%がAIに対して期待を寄せた。なかでもAIについてよく知っているグループでは92.2%が期待感を示した。知識が高いほうが、期待も高まる傾向がうかがえる。
AIの普及が日本の雇用に与える影響については、半数以上が「労働時間の短縮」(58.9%)と「業務の効率化・生産性の向上」(56.3%)と回答。失業率が上がる(12.3%)という悲観的な見方を大きく上回る結果となった。
AIの普及が職場に与える影響についても「既存の仕事の効率化、生産性が向上する」(48.2%)、「既存の仕事の質が向上する」(31.4%)、「労働力を補完する」(31.1%)と、前向きな回答が目立った。
また、AIに任せてみたい業務には「データ処理業務」(67.6%)、「データ分析」(63.4%)、「情報リサーチ」(43.4%)といった、データを扱う業務が上位にあがっている。
現在とAI時代において、自身の部下に対して求める「ビジネスで重要な能力」について聞いた。現在求める能力としては「対人関係力」(67.0%)、「分析的思考力・概念的思考力」(45.3%)、「複雑な課題に対する解決力」(30.4%)が上位に挙げられる一方で、AI時代には「対人関係力」(55.0%)、「創造力」(36.9%)、「分析的思考力・概念的思考力」(36.6%)、「複雑な課題に対する解決力」(35.3%)が重要になると考えている人が多かった。現在、最も重要と考えられている「対人間関係力」は、AI時代でも変わらずトップであるものの、12ポイント下落。一方、AI時代には「創造力」が重要になると考えている人が多いことがうかがえる。
また、これら重要な能力を向上するためには、「スキルを習得できる実務を任せる」(61.2%)、「新しい経験を得られる環境や職務を与える」(55.0%)ことが必要と考えている人が多いことが分かった。
「AI時代にビジネスパーソンとして活躍するために、現在の小学生が、今から取り組んでおいたほうが良いこと」については、1位に「語学(英語・中国語など)」(51.1%)、2位は「国語/読解力」(43.4%)、3位には2020年から小学校で必修となる「プログラミング」(42.7%)が挙げられた。
この結果について、人工知能(AI)等、テクノロジーの進展が、経済構造や産業構造に与える影響を主に分析している、東京大学大学院経済学研究科・経済学部の柳川範之教授は次のようにコメントしている。
「外国語については、AIによる機械翻訳の精度がかなり高まる可能性がある。しかし、外国人や異文化の人と適切なコミュニケーションをとるには字面としての翻訳だけでは不十分である。今回のアンケートで必要とされた語学力には、そのような異文化とのコミュニケーション力という意味合いが多分に含まれていると考えられ、今後はそのための能力開発がより重要になると考えられる」
人工知能(AI)が発達・普及することについての悲観論もあるが、今回の調査では、企業で働く管理職はAIに期待している割合が高く(88.7%)、また受け入れ度合も高いことも分かった。AIにより「失業率が上がる」と回答した人が12.3%にとどまったのに対して、「労働時間の短縮につながる」と回答した人は58.9%。働き方改革のキーワードとなっている、労働時間の短縮や業務の効率化について期待している人が多いことが明らかとなった。
このほか、ビジネス上で求められるスキルについては「対人関係力」が圧倒的な差で1位にランクインした。同調査では、今後、日本においてはテクノロジーとグローバル化の進展が相まって、これまでの産業やビジネスモデルが大きく変容し、個々人は従来とは異なるスキルセットを持つ必要が高まると分析。「対人関係力」はますます重要なスキルのひとつとなるが、その他にも複雑な課題に対する解決力、創造力、変化に対する柔軟性といったソフトスキルの必要性が増すことが予想されるとしている。