毎年4月や5月に健康診断を行う人は多い。日ごろの不摂生がたたり、「高血圧」「高血糖」といったフレーズが並ぶ結果シートを見て、気落ちすることもあるだろう。糖尿病や高血圧は生活習慣病の代表例だが、実はこれらの疾患以上に死に直結する可能性を秘めた"危険"な存在があることをご存じだろうか。その正体は「肥満」だ。
海外のさまざまなニュースを伝える「MailOnline」にこのほど、「肥満と早期死亡の関係」にまつわるコラムが掲載されたので、その内容を紹介しよう。
クリーブランドクリニックとニューヨーク大学医学部の研究者チームが2014年の米国における死因データを用いて分析したところ、米国ではタバコよりも肥満による早期死亡リスクが47%も高い事実が明らかになったという。高コレステロールおよび糖尿病も早期死亡を引き起こす主要原因ではあるが、肥満の発生率には至っていないとしている。
世界的な禁煙啓発努力の効果もあり、タバコが死因となるケースはここ15年間で急落している。それに取って代わるように"台頭"してきたのが肥満というわけだ。
現在米国では、肥満による早期死亡が問題視されており、タバコのときと同じように、肥満率削減運動をする必要があると研究者グループは主張する。
「変えることができる行動上のリスク要因によって、米国の死亡率はかなり高まっている」とクリーブランド・クリニック内科医のグレン・タクスラー医師は語る。糖尿病や高血圧、高コレステロールは治療できるが、肥満対策は難しい。これらの予備的調査は減量や糖尿病管理、健康的な食事が依然として重要であることを示している。
今回明らかになった結果は、臨床診療における予防ケアの重要性を指摘するものでもある。ところが、「乳がんや心臓発作という患者の直接の死因は特定できるかもしれないが、喫煙や肥満、飲酒、家族歴といった死亡の遠因がいつも明らかなわけではないというのが実状です」とタクスラー医師は語っている。
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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。