子どもを授かったら、一度は考える家族のための保険。「いつ何に加入すべき?」「本当に必要?」。そんな悩みを抱えるパパやママは多いのではないでしょうか。今回は、子どもが欲しいと考え出した時期、妊娠中、乳幼児期、小学校時など、子どもの成長に合った保険の加入や見直しタイミングをご紹介します。
保険の種類と目的
まずは、基本的な保険の種類とそれぞれの目的について押さえておきましょう。保険の種類は大きく分けると、生命保険、損害保険、医療保険に分けられます。
生命保険は、加入者が死亡した場合に、保険金が支払われるもの。一方損害保険は、偶然のリスク(交通事故など)によって生じた損害額に応じて保険金が支払われます。また、病気やけがの治療、それに入院などに備えるものは、医療保険に分類されます(入院保険やがん保険など)。
保険にはさまざまな種類がありますが、加入を判断するポイントは「加入する目的」を明確にすることです。子どもの成長に応じて考えられるリスクをもとに、保険加入の必要性を考えていきましょう。
子どもが欲しいと考え始めたら - 妊娠中の加入では間に合わない!?
結婚後、子どもが欲しいと考え始めたら、まず加入を検討してほしいのが医療保険です。妊娠経過が順調であれば、健康保険から出産育児一時金が出るため、出産にかかる自己負担額はそれほど大きくありません。しかし、入院や帝王切開など、妊娠・出産時に思いもよらない事態が発生した際、医療保険は強い味方になってくれます。
医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分が健康保険から支給される「高額療養費制度」を活用することはできますが、入院時の食事代や差額ベッド代などについては対象外となっています。
妊娠が分かってから医療保険に加入しても、「妊娠・出産による手術や入院は保障しない」という条件が付いていることが多いため、加入するかどうかは早めの判断をお勧めします。
妊娠が分かったら - 親の死亡時保障、どう考える?
そして妊娠が分かったら、うまれてくる子どものために、「生命保険」と「教育費を貯めるための保険」への加入を検討する必要があるでしょう。
まず生命保険についてですが、「遺族年金で不足する分のみ」加入しましょう。生命保険は保障額によって保険料も変わるので、家計のためにも具体的に計算して加入することが大切です。
パパが死亡した場合、遺族基礎年金からは、子どもが18歳まで※の期間、2人では約123万円/年、1人では約100万円/年が支給されます。これに加えて、サラリーマンであれば、パパの年収が約400万円だった場合、遺族厚生年金から約40万円/年の支給が想定されます(受給要件や受給金額はご家庭による)。それを表したのが下図です。
パパが死亡した場合、遺族基礎年金からは、子ども(18歳到達年度の末日を経過していない子)1人では約123万円/年、子ども1人では約100万円/年が支給される。これに加えて、サラリーマンであれば、パパの年収が約400万円だった場合、約40万円の支給が想定される |
このほか、死亡退職金や現在の貯蓄額も考慮した上で、足りない分を生命保険として加入すれば、保険料の払いすぎを防ぐことができますね。
次に、多くの方が加入を検討するのが「学資保険」だと思います。しかし、他にも教育費を貯めるための保険は、数多く存在していることをご存じでしょうか。例えば「低解約返戻金型終身保険」は、学資保険と同様に、教育費が必要なタイミングで解約、減額して、返戻金を受け取ることができる商品。教育資金に余裕があり、保険を解約する必要がなければ、そのまま据え置けるので、柔軟な使い方ができる点が魅力です。
また高い利率を望んでいて、投資に興味がある方であれば、損をするリスクはあるものの、「変額保険」「ドル建て終身保険」などを活用することも可能です。
貯金ではなく、保険によって教育費を貯めることのメリットは「死亡時の保障がある」(商品によって異なる)、「利率がつく」の2点。それぞれの商品が持つメリット・デメリットを考慮して、加入を検討してみてください。
※受給要件は、死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者。子とは、18歳未満到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、あるいは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
乳幼児期の子どもがいる場合 - けがと病気に備える
小さい子どもは、パパ・ママが十分に注意していても、けがや病気、トラブルがつきません。しかし、保育園や幼稚園で紹介される子育て世帯向けの保険……入った方がいいの? というお悩みもよく聞かれます。
まず子どもの医療保険については、自治体の医療費補助制度をチェックすることからスタートしましょう。全国的に自治体の助成が充実してきているので、万が一子どもが入院になっても、医療費の負担は少ないケースが多いです。例えば東京都渋谷区の場合、15歳(中学校卒業)までは、通院・入院の自己負担分が全額助成となっています。お住まいの自治体の状況を確認し、助成が十分にあれば、もしかしたら加入は必要でないかもしれません。
子どもの事故やトラブルに備える保険としては、「個人賠償責任保険」が代表的です。
・駐車場に停めてある車に子どもが傷をつけた
・子どものけんかでお友達にけがを負わせてしまった
・買い物に行った際、商品を落として壊してしまった
・自転車で事故を起こしてしまった
など、日常生活における他人に対しての賠償を、幅広くカバーしてくれます。
ただしこの保険、火災保険や自動車保険の特約として、既に加入している可能性が高いです。家族のうち1人が加入していれば、同居家族の全員が保険の対象になりますので、加入を検討する前に、一度確認してみましょう。
子どもが小学生になったら - 生命保険を見直すとお得になるかも!
子どもが小学生になると、住宅を購入したり、育児に専念していたママが本格的に働き出したりといった、ライフイベントが想定されるかもしれません。このタイミングでは、「生命保険」の保障内容や契約状況の見直しをお勧めします。
まず、住宅を購入している場合は、生命保険の保障内容を確認してみましょう。住宅ローン借り入れにあたり、「団体信用生命保険」(通称「団信」)に加入していれば、保険料を削減できる可能性があります。
「団信」は、住宅ローンの返済中に、ローン契約者が死亡または高度障害になった場合、ローン残高分の返済を肩代わりしてくれる保険です。残された家族は、住宅ローンの心配をせずに、住み続けることができます。既に加入している生命保険で、そのような保障がついている場合は、保障内容を見直すことで、保険料を抑えることができます。
さらに夫婦が共働きになり、双方が税金を納めている場合は、いずれか一方ではなく、夫婦それぞれで「生命保険料控除」を申請した方が、お得になる場合もあります。
なぜなら、控除適用のため申告できる保険料の金額は、「1人あたり」で上限が定められているからです。夫婦のどちらかが、1人で上限を超える保険料を支払っている場合、上限を超えた分をもう一方が支払い、申告した方が、結果的に世帯における控除の範囲は広がります。
保険に加入する一番の目的は、万が一の時、家計のリスクに備えることです。そのため、まずは貯金が十分にあれば安心なのですが、預貯金が少ない、あるいは子どもにお金がかかる子育て世帯にとって、保険加入は特に大切な選択となります。「起こるはずはない」と思っていても、油断は禁物。子どもの成長やライフイベントの節目で、その都度話し合っていきましょう。
著者プロフィール
マイライフエフピー代表 加藤葉子
子育て真っ最中のファイナンシャルプランナー。子どもを授かったことをきっかけに、教育費や学資保険の仕組みなどに興味を持ち、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、3年で子どもの教育資金を貯める。現在は、全国の女性からの教育費・老後資金・起業・離婚・投資なのお金の相談を中心に執筆・マネー講師として活動しながら、ファイナンシャルプランナーの育成にも力を入れている。自身のホームページ「女性とシングルマザーのお金の専門家」でもお金にまつわるお役立ち情報を提供している。