米労働省が5月5日に発表した4月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数21.1万人増、(2)失業率4.4%、(3)平均時給26.19ドル(前月比0.3%増、前年比2.5%増)という内容であった。
(1) 4月非農業部門雇用者数は市場予想(19.0万人増)を上回る21.1万人増となり、前月の鈍化(7.9万人増)から急回復。広範な業種で雇用が増加したが、中でもレジャー・接客などのサービス業がけん引した。増加数の3ヶ月平均は17.4万人となり、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が適正な増加ペースとする7.5万~12.5万人を引き続き上回っている。
(2) 4月失業率は市場予想(4.6%)を下回る4.4%に低下。3カ月連続の改善であり、2007年5月以来、ほぼ10年ぶりの低水準に並んだ。労働加率が62.9%に低下した一方、就業率は60.2%に上昇しており、労働人口の減少と就業者数の増加の両面から失業率に低下圧力がかかった。なお、不完全雇用率(やむを得ずパート職に就いている者などを含めた広義の失業率)も一段と改善し8.6%に低下した。
(3) 3月平均時給は26.19ドルと増加基調を維持。伸び率は前月比が予想通りの+0.3%だったものの、前年比では+2.5%と予想(+2.7%)に届かなかった。前月の平均時給が26.14ドルから26.12ドルに下方修正された事もあって、賃金の伸びはやや力強さを欠いた印象を受ける。
米4月雇用統計は、前月の雇用者数急減速が一時的な現象であった事を示す内容であり、米雇用市場の堅調さを改めて市場に印象付けた。1-3月期の米景気減速は一過性とする米連邦公開市場委員会(FOMC)の見方とも整合的な結果であろう。ただ、賃金の伸びが引き続き緩慢であり、インフレ圧力が高まる様子は感じられなかった。こうした中では、FRBの「緩やかな利上げ」の方針にも変更はなさそうだ。今回の結果は、すでに年内あと2回の利上げを見込んでいる市場に大きなサプライズをもたらさなかったと言えるだろう。米4月雇用統計の発表後、米国株は小幅に上昇したが、米長期金利は小幅に低下。ドルは対円で小幅に上昇した一方、対ユーロでは下落するなどマチマチの動きであった。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya