国土交通省の経営監視終了してから初となる中期計画を発表

JALは4月28日、国土交通省の経営監視終了してから初となる中期経営計画を発表。東京オリンピック・パラリンピック開催、首都圏空港の発着枠拡張が見込まれる2020年をひとつの節目として、「挑戦、そして成長へ」をテーマに、「2017-2020年度 JALグループ中期経営計画」を策定。「世界のJAL」×「一歩先を行く価値」=「常に成長」をキーワードに、「JAL Vision」を掲げている。

新規領域で1.3倍の売上げ目指す

前回の中期経営計画(2012-2016年度)では、フルサービスキャリア事業に集中し、機材・商品サービス・人財への投資を行いながら、高品質なサービスの追求と収益性の向上に努めてきた。経営目標については、「5年連続営業利益率10%以上、2016年度末自己資本比率50%以上」という財務目標を達成。安全と顧客満足目標は一部目標が未達となったものの、社員一丸となって取り組み、安全の層を厚くすると共にJCSI (日本版顧客満足度指数)にて国際線の再利用意向率および他者推奨意向率でNo.1を達成した。

植木義晴代表取締役社長は2016-2017年度の中期計画に関し、「われわれの強みは、非常に高い収益性を兼ね備えながら、着実に成長していくことにある。そのためには一定期間・一定時期、先行投資は必要だと思っている。2016-2017年度に関しては身を屈めるべき時。それは必ず、2020年以降に効いてくる」と語った。

為替の影響も含め、2016年度の人件費は250億円という大きな出資ではあったものの、「経営破たん後、大きく人件費を落とした。しかし、これだけ大きな利益を出しながら残しておくということは、経営者として正しくない」という判断から先行投資を実施。2017年度においてもIT領域などで、さまざまな先行投資を進めていくとしている。

植木義晴代表取締役社長「これだけ大きな利益を出しながら残しておくということは、経営者として正しくない」

2017-2020年度の中期計画では、引き続き「フルサービスキャリア事業を磨き上げる」ことに取り組み、"日本発のJAL"から"世界のJAL"へと変革し、安全・サービス強化に向けた将来投資を行いながらグローバルな変化に対応していく。

"強みを継承し磨く"という意味で、海外マーケットにおけるプレゼンテーションの向上や、国内地方マーケットにおける選好性向上を図る。これらの国際旅客・国内旅客・貨物郵便の領域を"コア領域"とし、2020年度売上げでは2016年度売上げの1.1倍を目指す。

加えて、"強みを活かす場を拡げる"という意味で、新たな収益源の創造・育成に着手する。この"新領域"は、グランドハンドリングや整備等の依託というような航空関連事業のほか、2017年5月から実施する「ビジネスジェットサービス」や、 2016年10月に設立した「Fun Japan Communications」などの新規領域を指し、2020年度売上げでは2016年度売上げの1.3倍を目指す。

中期経営計画の推移

北米と東南アジア間のネットワークを拡大

具体的な取り組みとして、「安全」「ネットワーク&商品・サービス」「部門別採算」「人材」「イノベーション」をあげている。ネットワーク&商品・サービスにおいては特に国際旅客を成長のドライバーと定め、他社との提携も含めて北米と東南アジア間のネットワークを拡大し、2020年に拡張が見込まれる首都圏空港発着枠の積極的な活用を見据えている。座席においても、ビジネスクラスのフルフラット化の拡大のほか、「新・間隔エコノミー」の搭載比率を2020年までに8~9割にする。さらに、新たな需要の獲得として、海外プロモーションも積極展開を目指す。

国内旅客においては、地域への送客を通じて地域活性化を図り、安定的な成長を実現する。特に増加する訪日外国人に対応し、現状2%程度の訪日外国人旅客を2020年には4%規模に拡大していく。そのほか、最新機エアバスA350-900の幹線への導入やエンブラエル190、ATR42-600などの新機材の地方路線への導入、機内インターネットや高品質な座席を装着する機材の拡大などを実施。また、離島や北海道などの地域に寄り添うネットワーク運営に取り組む。

新中期計画の骨子

達成すべき経営目標は、「安全」(航空事故ゼロ、重大インシデントゼロ)、「顧客満足」(NPS(Net Promoter Score: 顧客ロイヤルティを数値化する指標))を初導入、世界トップレベルの顧客満足を実現)、「財務」(営業利益率10%以上、FY20までに投資利益率(ROIC)9%以上を目指す)としている。

成長のステップとしては、2016年までの中期計画では品質の向上や人材への投資を行ってきたが、2017年においても機材やイノベーション等の将来投資のほか、IT刷新および整備費の増加を見据えている。確実な成長の実現のため、2017年度も規模を追わず、市場成長なみの供給増・便数増を図っていくとしている。新しい路線ネットワークや商品サービスについては、開始時期、具体的な内容など確定次第、発表していく。