三上博史がWOWOWの『連続ドラマW 社長室の冬 巨大新聞社を獲る男-』(4月30日スタート 毎週日曜 22:00~ 全5話・1話のみ無料放送)でカリスマ性溢れる暴君に扮する。

原作は堂場瞬一の小説『社長室の冬』。発行部数の激減、広告収入の低迷から日本最大の大手新聞社・日本新報が、外資企業である米巨大ネットショッピング会社AMCへの“身売り”を画策する。三上が演じるのはその企業を率いる日本法人社長・青井聡太役で、交渉にあたる南康祐(福士誠治)ら日本新報の社員たちを激しく揺さぶっていく。

『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』以来約2年ぶりに「連続ドラマW」の主演を務めた三上にインタビューし、暴君の役作りから、重責の“座長”としての立ち位置について話を聞いた。

三上博史

――まずは、脚本を読んだ感想から聞かせてください。

いつもは原作から入っていこうとするんですが、今回は設定が変わっていたので読まない方がいいかなと思い、脚本だけを読みました。報道という王道のジャンルですが、読んでみたら「なるほどこういう切り口なんだ!」と思って、ものすごく新鮮に感じました。

――どういう点が新鮮でしたか?

報道ものの映画やドラマはたくさんあるし、僕自身もドラマの「ストレートニュース」でプロデューサー役をやったりしたことがあったけど、本作はより今のご時勢を上手く反映しているドラマだと思いました。報道の世界を描いているけど、結局は僕たち視聴者に問題が突きつけられるという、まるで合わせ鏡のように自分たちが照らし出されてしまう話だなと。ちょっと身につまされる内容でした。

――三上さんはインターネットでニュースなどの情報を読まれますか?

"情報ダイエット"という言葉もあるようですが、僕自身は1人の人間として多くの情報があまり入らないようにしているんです。役者さんでケータイを持っていないという方も最近多いのですが、僕もどちらかというとそっちのタイプです。通信手段もずっとガラケーを使っていましたし、壊れてからはスマホにしましたが、あまり有効には使っていないタイプです。設定の仕方もわからないし、勝手にニュースが入ってきてチェックすると、余計な交通情報だったりしますし。そういうのは正直、不快ですね(苦笑)。

――ドラマではネットでニュースを配信する側のモラルも描かれていきますが、どのように受け止めましたか?

かつて自分が若かった頃は「知らない」と言うことが恥ずかしいことだったんです。だからわからないことは自分で勉強したり調べたりしたけど、今は「知らない」とか「わからない」「興味ない」と言うことが一般的になっていて、それに対しては憤りがあります。でも、何でもかんでも知っていた方がいいのか? というとそれも違うと思いますし。根深い問題だと思います。

今は必死になって取材して取ってきた記事も簡単にコピペされ、それがまた簡単に配信されてしまう。それも都合のいいところだけを切り取って、それでクリック稼ぎをされたりする。このことに対しては組織ではなく、1人1人のモラルとして考えていかないと追いついていかないですね。でも、難しい問題だとは思います。突き詰めればそこに需要がありますから。僕は発信する側ではないので、拒否することしかできないのですが。

――青井役にはどういう形でアプローチをされましたか?

青井はほとんど外に向けての人物像がメインになっていて、ナイーブな部分は一切見せないんです。そういう意味では外側だけで表現していかないといけなかったので、立体的に演じることが難しかったです。僕はどちらかといえばいつも強気だけど、実はこうなんだよねというナイーブな部分を演じるのが得意だったりするから。

『下町ロケット』の社長役にしても、社員たちの前では強気だけど、家に帰って子どもと会っている時にナイーブな部分を出せました。今回は南(福士誠治)という若い記者がウエイトみたいな存在になっているのかもしれないけど、僕は僕で演じなければいけなかったから、そこが難しかったです。

――本作の主演も含め、座長を務める上で心がけていることはありますか?

テレビドラマや、映画、舞台など、いろんなメディアの仕事がありますが、基本的には1人の作業ではないので、チームのポテンシャルを最大限に上げることは考えます。出演者やスタッフでいえば、ものすごく経験値の高い人から何も経験していない人までいろんな人がいるわけだから。みなさんがそこに揃った限りは、最大限にそれぞれがいろんなものを持ち寄らないとより良い作品はできないと思うので、そういうところは最も気は遣います。

でも、その中で自分がどういう人格であればいいのかということは日々悩むわけです。大きく分けると、20代の頃は「自分でとことんやればいい。そうすればその背中を見てくれるはずだ」と思ったり、「ああ、これじゃダメなんだ」と思ったりした時期がありました。その後、今度は「良い人になってみよう」と思ってやってみると、逆になめられちゃったりして(笑)。そうやって考えすぎるとどんどん違うところへ行っちゃうんです。

――そんな中でどんな活路を見出していったのですか?

座長のあり方についてはいろいろと変化してきましたが、最近は考えてもダメだなと思い始めました。やはりチームの中で自分の年齢が高くなってきちゃったので、整理する方に走るんですが、あまりにも整理一辺倒のオヤジだと誰もついてきてくれない。今はどの人格で行くのか模索中です(苦笑)。

ただ、そういうところにエネルギーを使うのは本末転倒だから、やっぱり自分の持ち場に戻り、自分に与えられた部門をきっちりやっていくしかないのかなと。まあ、みんなが「現場に行きたくない」と思ってしまうのは辛いことだから、何か1つワクワクするようなことを1人1人に提供できたらいいなあとは思っています。いいアイディアがあったら教えてほしいですね。