特撮テレビドラマ『仮面ライダーエグゼイド』のBlu-ray第1巻(仮面ライダーエグゼイドBlu-ray COLLECTION VOL.1/東映ビデオ)の発売を記念し、携帯アプリ「東映特撮ファンクラブ」の会員イベントである「東映特撮ファンミーティング」の第2回として『仮面ライダーエグゼイド』スタッフのトークイベントが渋谷TOEIにて開催された。
スクリーンではBlu-ray COLLECTION VOL.1に収録される新規スピンオフドラマ『【裏技】仮面ライダースナイプ エピソードZERO』の第1話を上映。その上、主演を務める仮面ライダースナイプ/花家大我役・松本享恭が急きょ登壇することになり、会場に詰めかけた多くのファンを歓喜させた。
『仮面ライダーエグゼイド』は、「ゲーム」をモチーフとした奇抜なデザインのライダーたちが多数登場し、人間に感染して「ゲーム病」を生み出す敵・バグスターとの戦いを経験して幾度もレベルアップを繰り返し、強くなっていくというユニークな展開。格闘ゲームをモチーフとするエグゼイド/宝生永夢は研修医、RPGがモチーフのブレイブ/鏡飛彩は失敗しない天才外科医、シューティングゲームモチーフのスナイプ/花家大我は医師免許を剥奪された闇医者と、メインの3人ライダーは立場こそ違えどそれぞれが医者として活動し、バグスターウイルスに感染した「ゲーム病」患者を救うため、ゲーマドライバー(ベルト)とガシャットを用いて仮面ライダーに変身する。
『【裏技】仮面ライダースナイプ エピソードZERO』は、全4巻の発売となる『仮面ライダーエグゼイド』Blu-ray COLLECTIONに1話ずつ収録される全4話の短編ドラマで、テレビシリーズでは語られない、医師免許を剥奪された元医師・花家大我/仮面ライダースナイプの「過去」を描いている。誰よりも先に仮面ライダーとして選ばれた男・花家大我は、どうして仮面ライダースナイプになったのか? なぜ医師免許を剥奪されたのか? そして、なぜあれほどまでにバグスターを憎むのか? 幻夢コーポレーションCEO・檀黎斗との因縁とは……? エグゼイド誕生の5年前に秘められたスナイプの過去が明かされ、花家大我という男の見方が180度変わる、壮絶なストーリーが繰り広げられる。
トークショーの司会進行を務めるのは、お笑いコンビ「オジンオズボーン」のボケ担当であり、大の東映特撮ヒーローファンでも知られる篠宮暁。篠宮はイベントの前説において、仮面ライダーゲンム/檀黎斗の邪悪な笑いなどのモノマネを披露。自身の顔つきが黎斗を演じる岩永徹也に似ていると自負している篠宮だけに、ゲンムネタの完成度は極めて高く、大いに笑いを取っていた。
まずは『仮面ライダーエグゼイド』のチーフプロデューサー大森敬仁氏と、メインライターを務める脚本家・高橋悠也氏が登壇。テレビシリーズについてのトークが始まった。高橋氏は、特撮作品のメインを務めるのは本作が初だという。
大森氏は、高橋氏を『エグゼイド』のメインに起用したことについて「以前、『仮面ライダードライブ』(2014年)のBlu-ray映像特典(シークレットミッションtype TOKUJYO)で、若い方と一緒にやりたいと思って声をかけたのがきっかけです。特典でありながら、テレビ本編と深く関わるような物語をうまくこなしてくださり、非常に融通をきかせて仕上げてもらった力量を見込んで、『エグゼイド』ではイチから世界観やストーリーを高橋さんと作り上げたいと思いました」と、胸の内を明かした。
さらに、「高橋の脚本の魅力とは?」との問いに対して、大森氏は「高橋さんはまず、人間は悪い=性悪説でシナリオを書いているのが、仮面ライダーの世界観と合っている(笑)。また、年間を通じてキャラクター玩具やアイテムがたくさん出てくる作品なので、そういうガジェットを全体にまぶしながらお話を書くことができる。そして、(仕事が)早い! だからこそ、これまで『エグゼイド』のテレビシリーズはぜんぶ高橋さんお一人で書いてもらえているんです。僕としても、すごく一緒に作っている感覚が強いです」と答え、高橋への強い信頼感を示していた。
「ゲーム」と「医療」がテーマとなった『エグゼイド』の企画については、「前作の『仮面ライダーゴースト』(2015年)が命をテーマにしていたので、同じことをやっても仕方がないと思いましたが、たった一つしかない命を助ける"医療"と、何度でもよみがえることのできる"ゲーム"を対比として描き、生と死、みたいなテーマに向き合っていければと考えました」と大森氏は発想の根本を話した上で、「最初、ゲームと医療がテーマだと言っても誰にも理解されなくて心配だったけれど、中澤祥次郎監督が撮ってくださった第1話の試写を観て『よし、成立してる!』と確信できたのが強く思い出に残っています」と、斬新な作品を世に送り出すまでの苦労をしみじみ語っていた。
一方、「思い出に残っているシーンやセリフは?」という問いについて高橋氏は、「すべてのシーンに思い入れがあって、ひとつは選べない。強いていうなら、シリアスなシーンが続く合間に、ときどき入るギャグシーンが印象深いものになっている」と笑顔を見せた。第12話という早い段階で、エグゼイドの仲間になりつつあった仮面ライダーレーザー/九条貴利矢が「ゲームオーバー」を迎えて退場してしまった件については「なんといっても、クリスマスの放送回でしたからね。聞いた話では、レーザーの玩具を買ってもらった子どもさんがあの回をオンエアで観て、思わず玩具を床にカターン!って落としたと……」と、子どもたちにかなりのショックを与えたことを痛感しつつ、「命をテーマにするにあたって重要なシーン。子どもたちが将来、大きくなったときにも何かを残すことができればいいなと思いました」と、クリエイターとしての覚悟と熱意を改めて示した。
話題はBlu-ray特典のスピンオフドラマ『仮面ライダースナイプ エピソードZERO』に移り、『スナイプZERO』の脚本を手がけた高野水登氏と鈴村展弘監督がステージに上った。
大森氏は本作について、「みなさんご存じのとおり『エグゼイド』はスピンオフが多いんです。YouTubeで『ゲンム』、東映特撮ファンクラブ限定番組で『ブレイブ』そして今回のBlu-ray特典『スナイプ』ですね。鈴村さんは平成ライダーに関わりが深く、特撮にもたいへん造詣が深いことから、一風変わった作品をお願いしても安心だった」と、鈴村監督を『スナイプZERO』に起用したポイントを明かした。
高野氏は「もともと『スナイプZERO』に関しては、テレビシリーズ企画段階で詳細な過去設定がありまして、それをもとにストーリーを作っていきました。もちろん執筆にあたっては、高橋さんと膨大なLINEのやりとりをしています」と、メインライターの高橋との綿密な相談を経て本作のドラマ作りに取り組んだと説明した。
鈴村監督は「『ドライブ』Blu-rayの『シークレットミッション』以来、シークレット監督とか裏技監督とか言われていまして(笑)。本編をやらせてよって言ってるんですけれどね……」とこぼしつつ、「『ブレイブ』や『スナイプZERO』では、日曜あさのテレビ的に厳しい描写……子どもが泣いちゃうようなハードな映像表現、そんなことをいろいろ映像化できたのが面白かったですね」と、昨今のヒーロー作品では表現が難しいバイオレンス描写を思い切り演出できたことに満足そうな笑顔を見せた。
スナイプ/大我が主役という部分について、鈴村監督は「今回はスナイプが主役なんだ、というところは強く意識しました。(松本)亨恭くんにも、この作品では3番目のライダーじゃなく、座長らしく、主役として演じてほしいと力を入れました」と、スピンオフならではのこだわりを語った。
続いて『仮面ライダースナイプ エピソードZERO』(第1話)が上映された。テレビシリーズでは決して自分の優しさを表に出さず、偽悪を装っている大我だが、彼の過去を描いたスピンオフドラマでは患者に対して優しい笑顔を向け、放射線科の天才医師として活躍する華々しい様子が描かれている。ドラマのポイントはまさに、「大我の過去に何があったのか」という部分に尽きるといっていいだろう。
上映後、スケジュールの都合により当初の予定になかった松本享恭の登壇が、急きょ実現。会場のファンにとってはうれしいサプライズとなった。
松本は自身の主演作について「『スナイプZERO』では黒髪になり、鈴村監督と話し合って"さわやかさ"を強調しました。テレビ本編での大我には友だちがいない……というか他人を拒絶していますけれど、『スナイプZERO』では牧治郎という親友がいるところが重要ですね。テレビとは明確に差をつけたいなと意識して演じました。いつもと違う笑顔とか……」と、自信ありげに語った。また、「『スナイプZERO』を撮影した後、テレビのほうで飛彩とつかみあうシーンを撮ったんですが、大我の過去にどんなことがあったかを把握した状態だったので、気持ちを強く込めることができた。その点でも『スナイプZERO』をやれてよかった」と、自身のキャラクターを完全につかむことができたという手ごたえを感じていた様子だった。
高野氏はストーリーを作り上げるにあたって「そもそも、テレビでの大我はなんで髪が(部分的に)白いんだろう?って疑問から始まりました。脚本には髪の色のことまで描写されていませんでしたからね。染めたわけじゃないでしょうし(笑)。外見も含め、彼はどうして変化してしまったのか、というところから発想していきました」と、発想の元が「大我の髪の色」から始まったという裏話を披露。また「劇中での"バン!"という言い方について、おこがましいとは思ったんですけど、ささやく感じでお願いしますって松本くんにお願いしたんです」と、こだわりのシーンについて主演の松本にリクエストしていたことを明かし、「(松本に)会ってみたらそのオーラに圧倒されて、緊張の極みでした。僕はみなさんと同じくTTFC(東映特撮ファンクラブ)の会員なんです(笑)。僕の書いたセリフを演じていただくなんて……と恐縮しっぱなしでした」と、松本への強いリスペクトがあったことを語った。
テレビ第1話以前の大我を描くストーリーを作ったことについて、大森氏は「『スナイプZERO』をやってよかったのは、この先のストーリー(全4話)を観ていくと、大我がさわやかな青年医師からダークな闇医者に変わっていく瞬間がよくわかるということ。今日上映した作品での大我のほうが、素の松本くんに近いんですね。闇医者の要素は、けっこう無理させていたと感じています」と、次第にダークな部分を深めていく大我の変化の部分に、確かな手ごたえを感じているもようだった。
鈴村監督は松本について「撮影は過酷だったけれど、享恭は常に真面目に取り組んでいました。真面目だし、根性もある」と絶賛。特に過酷だった「雨降らし」のシーンでの頑張りを称えていた。鈴村監督による「おすすめシーンは?」の問いについては「最終回となる第4話のラストシーンでの、享恭の表情がいいんですよ。ぜひ期待してください」と、Blu-ray COLLECTION VOL.4に収録予定の第4話を挙げ「全4巻のBlu-rayを買っていただいて、『スナイプZERO』の1、2、3話をご覧になった上でテレビシリーズ本編を観ていただき、最終回の後に4話を観てくだされば、なんとなく『こういうことだったのか……』と気づく部分があるんじゃないかと思います。ぜひ、テレビ本編のストーリーと合わせて"裏技"シリーズも楽しんでください!」と、スピンオフドラマシリーズのお楽しみポイントをアピールした。
『スナイプZERO』の今後も気になるが、さまざまなキャラクターが敵側、味方側で入り乱れるテレビシリーズ『エグゼイド』のスリリングなストーリー展開も、実に気がかりなところ。今後の展開について質問された大森氏は、「多くは語れませんが、とにかく高橋さんはまだ書き続けています。いま35、36話あたりですね」と、まだストーリー作りが現在進行中であることを明らかにした。
大森氏は続けて、「この先は、作っている我々もどうなるか、予測がつかない。それぞれのキャラクターが生きていますので、こいつはこんなこと言わないとか、ここではこうはならないとか、いろいろな部分を話し合いながら、悩み苦しみつつ作っています。最終的に『エグゼイド』がどんなところへ向かっていくか、楽しみにしてください。最後まで、みなさんが楽しめる作品にしていきたいと思っています。1話見逃すと人間関係がまるで変わるという展開が続きますので、これから毎週1話も見逃さないようにお願いします」と呼びかけた。
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