多種多様な候補から自分好みの端末を選択でき高度なカスタマイズが可能、それがAndroidの魅力であり強みです。しかし、その自由度の反面わかりにくさを指摘されることも少なくありません。このコーナーでは、そんな「Androidのここがわからない」をわかりやすく解説します。今回は、『動画視聴時、Bluetoothイヤホンの音が遅れるような気がします?』という質問に答えます。
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動画を再生するとき、音声出力は内蔵スピーカーではなくBluetoothイヤホンを利用すると、音が遅れて聞こえるということですね? それは、けっして気のせいではありません。Bluetoothオーディオで発生する遅延(レイテンシ)により、映像とシンクロして収録されているはずの音声が若干遅れて耳に届くためです。
遅延はミリ秒単位というごくわずかなものですが、人間の感覚は繊細です。映像で話している人の口もとの動きと声が一致することを「リップシンク」といい、120ミリ秒前後で音声の遅れに気付くといわれますが、Bluetoothの音声伝送に使われるコーデックの種類によって、この値は前後します。オーディオコーデックの種類によっては、違和感を感じるほどのリップシンクが発生するのです。
Bluetoothは用途ごとに規約(プロファイル)が設けられ、オーディオ用途には「A2DP」プロファイルが用いられます。そこではPCM信号を符合化/復号化することで情報量を圧縮するプログラム「コーデック」が規定され、Bluetooth/A2DPをうたうには必須の「SBC」、圧縮率を高めることで音質を高めた「AAC」、原音に対し4対1という固定比率で圧縮する「aptX(アプト・エックス)」が主に用いられています。
遅延幅は、使用されるコーデックによって異なります(表1)。すべてのBluetooth/A2DP対応ヘッドホンが対応しているSBCは遅延が大きく、他のコーデックと比べリップシンクが目立ちやすくなっています。SBCより音質で有利とされるaptXは、リップシンクが目立たないレベルといえます。AACはSBCほどではありませんが、低ビットレート時(128kbps程度)であればリップシンクに気付くかどうかというレベルですが、256kbpsあたりになると800ミリ秒前後と遅延幅が大きくなり、リップシンクがかなり目立つ結果となります。
スマートフォン向け主要コーデックの比較 | |||
ビット深度(bit) | 圧縮率 | レイテンシ | |
AAC※ | 16 | 20分の1 | 120ミリ秒前後 |
aptX | 16 | 4分の1 | 70ミリ秒前後 |
aptX Low Latency | 16 | 4分の1 | 40ミリ秒前後 |
SBC | 16 | 20分の1 | 220ミリ秒ms |
※:ビットレートが128kbpsのとき。ビットレートが高くなるとレイテンシが大きくなる |