JALは5月1日より、東京=パリ間の定期便とビジネスジェットのチャーターサービスを組み合せた「JAL FALCONビジネスジェットサービス」の販売を開始。フランス大手ビジネスジェットオペレーターのダッソー・ファルコン・サービスと提携し、法人向けサービスの新事業を開始することで、付加価値の高い欧州路線戦略と新事業への芽を育てる"新しい挑戦"を展開する。
パリから始め、需要を探る
「JAL FALCONビジネスジェットサービス」ではまず、パリのシャルル・ド・ゴール空港まではJAL便を利用し、ダッソー・ファルコン・サービスが提供するリムジンサービスにて4km先のル・ブルジェ空港に向かう。その後、ダッソー・ファルコン・サービスが運航するビジネスジェットのチャーターフライトに乗り継ぎ、欧州・中東・アフリカを巡る。
JALでは、日本発=欧州・中東・アフリカ向けのファーストクラス/ビジネスクラス需要は年間約80万人であり、そのうち約30万人は定期便を就航していないオフライン地点が最終目的地であるという。この層は実際にビジネスジェットサービスを利用しているという実績もあり、今回の「JAL FALCONビジネスジェットサービス」のターゲットとなる。
今回の新事業に関してJALの植木義晴社長は、「ビジネスジェットは世界で3万機程度登録されており、毎年4%程度の割合で増えている。ただ残念ながら、先進国の中では日本のビジネスジェットサービスは遅れている。『JAL FALCONビジネスジェットサービス』をパリから始めるが、これは需要を探るという意味もある。今回の結果を受けて、地域や地点を広げることも検討していきたい」と述べている。
また、欧州から新事業を始める理由として、戦闘機やビジネスジェット機を製造する航空機メーカー、ダッソー・アビエーションの100%子会社であるダッソー・ファルコン・サービスと提携できたという以外にも、欧州におけるビジネスジェットサービスのニーズの高さをあげている。
時間価値を買うという選択
そもそもビジネスジェットによるメリットとして、植木社長は「1番の利点は時間価値の創出、2点目は肉体的・精神的な疲労の軽減」と話す。専用ラウンジでの入国審査などによる乗り継ぎ時間の短縮や、行程に合わせてフライトスケジュールが設定できる点、また、1,300~1,500mの滑走路があれば着陸できるため、行程に合わせて到着空港の選択肢も広げることができる。飛行機そのもののプライベート空間はもちろんのこと、機内サービスは日本食も含め自由にカスタマイズも可能だ。加えて、テロ・ハイジャックのリスク低減などを求めるVIPのニーズに応えるサービスとなる。
ダッソー・ファルコン・サービスが拠点としているル・ブルジェ空港はパリ市内にあり、シャルル・ド・ゴール空港から4km、パリ中心地から15kmという距離に位置する。同じくパリにあるオルリー空港よりも歴史は長く、7つのシェードと26のファルコン専用のスポットがあり、整備作業も可能。発着実績は2015年で5万5,000回となる。
ダッソー・ファルコン・サービスは、ファルコン900B(12座席/5ベッド、航続距離: 6,120km)を3機、ファルコン900EX(12座席/6ベッドまたは13座席/6ベッド、航続距離: 8,300km)を3機、ファルコン7X(14座席/5ベッドまたは15座席/6ベッド、航続距離: 1万1,019km)を3機保有。フライト実績として欧州域内が40%、アフリカが34%、中東が7%と、全体の約8割は欧州・中東・アフリカとなっている。現状、アジアのシェアは6%であり、JALと提携することによってダッソーはアジア市場の顧客開拓を狙う。
ビジネスジェットサービスに関して言うと、ルフトハンザグループはルフトハンザ・プライベートジェットとして事業を展開しており、既存需要の欧州域内接続地点はフランクフルトが最大となっている。そのほか、パリも需要は高いため、パリに拠点があるダッソー・ファルコン・サービスの強みを生かすメリットは大きいと言えるだろう。
まずは年間50フライトが目標
事業としては、JALがすでに提携している法人向けにサービスを提案していき、JALが全国にもつ支店経由で大手企業や官公庁、スポーツ団体、また、旅行会社経由での営業も展開。目標は年間50フライトと定め、JALは販売代理店という位置づけとして、5~8%程度の手数料を得るというビジネススキームとなる。機材やフライトスケジュール、サービス、価格等はそれぞれのプランにあわせてオーダーメイドとなり、フライトは1週間前まで受け付ける。
一例として、1日でパリ→マドリード→チューリッヒ→ロンドン→パリを巡る行程を、7人乗りでファルコン50EX(「JAL FALCONビジネスジェットサービス」では対象外の機材)を用いてプランニングした場合、総飛行時間は6時間(+3時間空港で待機)で価格は3万6,200ユーロというフライトも可能となる。また、4日でパリ→コートジボワール・アビジャン→ナイジェリア・ポートハーコート→南アフリカ・ケープタウン→エジプト・カイロ→パリを巡る行程を、7人乗りでファルコン7Xを用いてプランニングした場合、総飛行時間は27時間で19万8,900ユーロということも可能だ。
競合他社は欧州において、ネットワークの広さをメリットとして展開している。今回のビジネスジェットサービスは、需要を探るという新事業に向けた施策という面も大きいようだが、付加価値のあるフライトを提案することで、VIPに対するステイタスを高めるという狙いもあるのだろう。ビジネスジェットというサービスゆえに、価格で勝負するのではなく、VIPにあわせたオーダーメイドのフライトをサービスするという意味でJALパックがもつネットワークを活用し、現地でのホテルや車、ガイド、通訳、食事などの付加価値の高いサービスをあわせて展開していくという。