その瞬間はふいにやってきました。2年間に渡る不妊治療の末、たとえ今回も残念な結果だったとしても、決して落ち込まないと心の準備をしながらクリニックを訪れた1月の寒い朝。「おめでとうございます」の突然の一言に、私の目には無意識に涙が溢れていました。いつもクールな女医の先生が、とても優しい表情でゆっくりと今後のことを話してくれたのを覚えています。
そこから私にとって幸せと不安が入り混じった、全てが新しい生活がスタートを切りました。小さな命が動き出しているーーー。
とはいえ、それはあまりにも実感がなく、嬉しい反面、万が一何かあったらと、むしろそちらの心配の方が大きくて、安定期に入るまでは気が気ではありませんでした。
唯一確認できるのは、病院で検査を受けるとき。最初の2ヵ月ほどは毎週通院したのですが、その1週間がやけに長く感じられました。エコーで赤ちゃんの、まだ「人」とも呼べないような小さな物体が写し出され、その中心にドクッドクッと動いている部分があり「ほら、ここが心臓。動いてるでしょう」と言われると、不思議な感覚とともにひと安心。ここにきちんと命があることを確認し、そのたびにじんわりと幸せを感じるのでした。