米労働省が4月7日に発表した2月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数9.8万人増、(2)失業率4.5%、(3)平均時給26.14ドル(前月比0.2%増、前年比2.7%増)という内容であった。

(1)3月非農業部門雇用者数は市場予想(18.0万人増)を大幅に下回る9.8万人増にとどまった。小売業の減少(-3万人)が響いた。前月分と前々月分が合計で3.8万人下方修正されており、今回の結果だけ見れば失望的な内容と言わざるを得ない。ただ、3カ月平均は17.8万人増と堅調を維持している。雇用の増加基調に陰りが見え始めたと判断されるほどの弱い内容ではないだろう。

(2)3月失業率は市場予想(4.7%)を下回る4.5%に改善。2カ月連続の改善であり、2007年5月以来、ほぼ10年ぶりの低水準を記録した。生産年齢人口(15歳~64歳)に占める労働力人口(労働の意志と能力を有する者)の割合を示す労働参加率が前月と変わらずの63.0%であった事を勘案すれば、良好な結果と言えるだろう。なお、不完全雇用率(やむを得ずパート職に就いている者などを含めた広義の失業率)も8.9%と、前の月から0.3%改善して2007年12月以来の水準に低下した。

「米非農業部門雇用者数と失業率」

(3)3月平均時給は26.14ドルとなり、20カ月連続で増加。伸び率は前月比(+0.2%)、前年比(+2.7%)ともに予想通りであった。インフレ圧力を高めるほどの伸びではないが、緩やかな賃金上昇基調の継続が改めて確認できる結果と言えるだろう。

「米国平均時給」

米3月雇用統計は、事業所調査である非農業部門雇用者数が減速した一方、家計調査である失業率は大きく改善するという、整合的とは言えない結果であった。一般的に事業所調査のほうが信頼度が高いと考えられる事もあって、市場の初期反応はドル安および米長期金利低下というネガティブなものであったが、一拍置いてドルも長期金利も持ち直した。

失業率の低下や賃金の伸びを考慮すれば、非農業部門雇用者数の鈍化は許容範囲内というのが市場の最終的な評価であろう。なお、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は以前、「長期的には、雇用の伸びは月7.5万~12.5万人で整合性が取れる」と発言している。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya