JR東日本秋田支社は9日、引退する特急形寝台電車583系の車両展示会を開催した。秋田駅2番線ホームに583系を展示し、ホームからの外観見学、事前応募の完全予約制による車内見学をそれぞれ実施。今回の企画に限り入場券などは不要とされ、583系の最後の姿をひと目見ようと、多くの来場者でにぎわった。
交直両用特急形寝台電車は1967(昭和42)年に交流60Hz専用車の581系、翌1968年に交流50Hz/60Hz両用で寒冷地の走行にも対応した583系がデビュー。581系デビュー時の夜行列車にちなみ「月光形」の愛称でも親しまれたという。国鉄時代の全盛期には、関西と九州を結ぶ「明星」「金星」「なは」、首都圏と東北を結ぶ「はくつる」「ゆうづる」「はつかり」「みちのく」をはじめ、夜行の寝台特急から昼行特急まで幅広く活躍した。
その後、新幹線開業なども影響して運用範囲が縮小され、国鉄時代末期には近郊形電車(九州・東北地区の715系、北陸地区の419系)へ転用改造された編成もあった。JR発足後も583系の活躍は続いたが、大阪~新潟間で運行された急行「きたぐに」を最後に定期運用を失い、運行列車の減少、車両老朽化による廃車も進んだ。
最後まで残った編成は、JR東日本の秋田車両センターに所属する団体臨時列車用の6両編成(クハネ583-8、モハネ582-106、モハネ583-106、モハネ582-100、モハネ583-100、クハネ583-17)。外観・車内ともに国鉄時代の面影を残し、「わくわくドリーム号」などで首都圏へ運行されることも多く、鉄道ファンから注目を集める車両となっていた。
今年2月、JR東日本秋田支社が583系の引退を発表。最終運行として4月2・8日に団体専用臨時列車が企画され、「ありがとう583系」のヘッドマークを掲げて奥羽本線を走行した。4月8日は秋田~弘前間を2往復し、各駅ホームや沿線に鉄道ファンらが集まった。その翌日に開催された車両展示会も、朝から多数の来場者による列ができ、イベント開始前の朝9時の時点で約800名が受付を行ったという。
583系は9時20分頃、秋田駅2番線ホームに入線。前日に行われた最終運行と同様、「ありがとう583系」のヘッドマークが掲出された。外観見学・車内見学ともに班ごとに時間を区切って実施され、車両の隅々まで撮影する来場者が多かった。途中、各車両で幕回し(故障中の1・5号車は除く)も行われ、「ふるさとゴロンと号 上野(FOR UENO)」「特急かもしか 秋田(FOR AKITA)」などの列車名・行先が次々に表示された。
車両展示会が行われた2番線ホームに隣接して臨時販売所も設けられ、583系オリジナルグッズ(引退記念プレート、缶バッジ、クリアファイル、キーホルダー)を販売。こちらも多くの来場者が並んでいた。583系はこれにて約50年の歴史に幕を下ろし、引退となるが、秋田駅改札内「駅のはなみち」(7・8番線連絡通路)では5月7日まで、ラストランを記念した「ありがとう写真展」を開催中。583系の思い出の写真が多数展示されている。