野菜嫌いな子どもは多いが、野菜が苦手という大人も決して珍しくない。独特のにおいや苦味などがダメな理由なのかもしれないが、野菜は食物繊維や各種ビタミンが補える貴重な食材だ。そのため、厚生労働省が推進する健康作り運動「健康日本21」では、毎日350g以上の野菜摂取を推奨している。
このように健康な体の維持のために野菜は欠かせないが、最近発表された研究報告によると、ストレス緩和にも好影響を及ぼすようだ。
海外のさまざまなニュースを伝える「MailOnline」にこのほど、「野菜の摂取とストレス低減」に関するコラムが掲載された。その内容を紹介しよう。
従来の研究において、「ホウレンソウのような濃い色の葉物野菜には葉酸が豊富に含まれており、セロトニンやドーパーミンといった、脳を安定した気分にさせるものの分泌を増やすのに役立つ」ということが明らかになっていた。それに追加する形で、一日に多くの野菜を食べる人は、そうでない人と比べてストレスが軽減されるということがこのほど判明した。
高レベルのストレスに関係があるものとしては「女性」「若年」「低学歴」「低収入」「過体重」「喫煙者」などがあげられる。野菜には健康的なライフスタイルに必要なビタミンとミネラルが豊富に含まれているほか、こういった要因がもたらす毎日のストレスを軽減する効果があると考えられている。
調査は45歳以上のオーストラリア人6万人を対象とし、シドニー大学で行われた。研究者グループは2006~2008年および2010年の2回にわたり、対象者の「果物と野菜の消費」「ライフスタイル要因」「精神的苦痛」を測定した。精神的苦痛は、10項目の質問で不安と抑うつ症状を測定できる「ケスラーの心理的苦痛尺度」を用いて調べた。
その結果、一日に3~4人前の野菜を食べる人は0~1人前の野菜しか食べない人と比較して、ストレスで悩まされるリスクが12%低減した。同様に5~7人前の野菜を食べる人は14%低減したという。
特に女性は有意差が顕著に出ていた。3~4人前の野菜を食べると18%、5~7人前の野菜を食べると23%、それぞれ0~1人前しか食べない女性に比べてリスクが低減したとのこと。
一方で、果物の消費だけではストレスの軽減に無関係ということがわかった。さらに、7人前以上の果物&野菜の摂取とストレス発生リスクには有意な差が見られなかった。
「毎日適度の果物と野菜を食べることは、精神的ストレスを低減することに関連しています。毎日、中程度の野菜を摂取すれば心理的ストレスの発生率が低くなることが明らかになっていますが、中程度の果物摂取だけでは、人々の心理的ストレスには大きな利益をもたらさないようです」とシドニー大学のメロディー・ディング博士は語る。
サラダとフルーツ、どちらを食べようか迷った場合は前者の方がよさそうだ。
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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。