LINEが30日都内で開催した株主総会では、クラウドAIプラットフォーム「Clova」の事業展開について質問が集中した。既存事業と並行しながら、中長期的にAIナンバーワン企業を目指すというLINE。グーグルなど世界のIT業界のジャイアントがライバルになるが勝算はあるのか。

LINE株主総会の様子。報道向けにモニターを通じて公開

AIナンバーワン企業を目指すLINE

Clovaは、2月末にスペインバルセロナで開催されたモバイル関連の展示会「MWC 2017」でLINEが公表した新たな事業・サービスだ。現在、AIを活用した音声アシスタントサービスがポストスマホ的な存在として世界で注目されているなかで、LINEもこの分野に参入する。

LINEの出澤剛CEOは、近い将来の生活スタイルとして、「自宅の空調を声でコントロールして温度設定をする、冷蔵庫を開けてビールがなくなりそうだったら、追加注文を声でする。あらゆるデバイスがネットワークにつながる、IoTの時代が来つつある」とし、AI、引いては音声アシスタントの存在感が大きなものになっていくと見ている。

同氏の発言どおり、事業としての位置づけも重要だ。中長期的には、大きな柱になる事業としており、出澤氏は「スマホナンバーワン企業からAIナンバーワン企業へ」を今回の株主総会で標榜、現行のLINE事業を拡大しながら、新たな収益源になることに期待しているのである。

今初夏にはデバイスを国内発売

では、どういったスケジュールで、同社は何を行っていくのか。

LINEはまず、2017年初夏にClova搭載の音声アシスタントデバイスを「WAVE」、冬に「FACE」をリリースする。このデバイスでは、音声での自然な会話や、ニュース、天気・占い、コマース、カレンダー、翻訳などのコンテンツやサービス、電気のオン/オフなどを行うホームコントロールなどが行える。「簡単に言えば、24時間、何でもこたえてくれる秘書のような存在」と出澤氏は話す。

初夏に日本・韓国で発売予定のWAVE(画像:LINEプレスリリースより)

2018年には、ソニーモバイルコミュニケーションズやLGエレクトロニクス、タカラトミー、バーチャルホームロボット「Gatebox」で注目を浴びるウィンクル(3月2日に連結子会社化を発表)といったパートナーが手がけるデバイスに展開していく。Clova事業を担当する舛田淳CSMOはさらに「Clovaをオープン化して、メーカーや開発者が直接自由につなぎ込めるようなことを考えている」としており、多種多様なデバイスにClovaを搭載していく方針だ。

初期はデバイスの販売も手がけるものの、LINEが注力するのはAIプラットフォームの開発・運営の部分。現段階において、どうマネタイズを図るのかはわからないが、コミュニケーションプラットフォームのLINEがこれまでの事業で示してきたように、プラットフォームの掌握は多様なマネタイズ化のとっかかりとも言える。それだけに、非常に注目される事業になるといえるだろう。