3月30日、NHK『おかあさんといっしょ』を卒業しただいすけお兄さん。「だいすけロス」に陥っているママたちも多いと思います。その1人、イラストレーターの前川さなえさんに、だいすけお兄さんが登場した9年前から、ずっと番組を見続けてきたママとして、お兄さんへの思いをイラスト入りで綴ってもらいました。

だいすけお兄さん、ありがとう!

泣いてしまったのは子どもではなく私だった

『おかあさんといっしょ』3月30日の放送を見て、子どもの前にも関わらず、私は泣いてしまいました。

9年間、うたのお兄さんを務めただいすけお兄さんのスタジオラストの日。だいすけお兄さんがカメラに向かって「『おかあさんといっしょ』を卒業することになりました」と言った瞬間、「い、いやだぁぁぁ」と涙がポロポロこぼれたのは、子どもじゃなくて私の方でした。

だいすけお兄さんが初登場した日の放送は、録画して今でも残しています。先代のゆうぞうお兄さんとしょうこお姉さんに紹介されて、たくみお姉さんと一緒に「はじめまして」のあいさつをしただいすけお兄さんは、まだちょっとだけぎこちなくて、でも、人懐っこい笑顔で……。その頃まだ小さかったうちの子どもたちも、戸惑うことなく新しいお兄さん、お姉さんが大好きになりました。

スタジオ収録で感じたお兄さんの魅力

『おかあさんといっしょ』が大好きな私と息子は、スタジオ収録に参加したこともあります。しかし息子は場所見知りが炸裂。本番前に泣いて、私から離れられなくなってしまいました。スタッフのお姉さんたちが上手に息子をなだめながら、テレビで見慣れたスタジオセットまでなんとか連れてきてくれたのですが、リハーサルが始まっても、息子は抱っこのまま……。その時点で、私はもうほとんど収録に参加するのを諦めていました。

歌声と癒しのオーラがほとばしっていたお兄さん

これ以上迷惑をかけるわけにはいかないし、生でお兄さんお姉さんを見られたことを思い出に、今日は帰るんだ……と思っていたら、エンディングのリハーサルで人形劇(当時)、モノランモノランのキャラクターたちが作ったお手手のトンネルを、息子を抱っこした私も一緒にくぐらせてもらえることになったのです。

その時に、ものすごく近くでだいすけお兄さんを見ました。リアルのだいすけお兄さんは、なんというか、頭から指先まで「うたのお兄さん」でした。全身から歌声と癒しのオーラがほとばしり、まぶしすぎて目がつぶれるかと思ったほど。現場スタッフの方たちの温かさや、うたのお兄さんの歌・子どもたちに対する思いを丸ごと感じることができた、貴重な体験でした。

まぶしすぎて、目がつぶれるかと……

ずっとみんなのうたのお兄さん

うたのお兄さんとしては、わりとフリーダムだったゆうぞうお兄さんに比べ、初期のだいすけお兄さんは正統派でさわやか路線でしたが、どんどん才気煥発させていきます。だいすけお兄さんのキャラクター芸が開花していく頃には、うちの子は成長し、あまり番組自体を見なくなっていたけれど、子どもたちが登校した後、私だけ、『おかあさんといっしょ』を見続けていました。

だいすけお兄さんそっくりの、かぞえてんぐさん

そして、彗星のごとく現れた、だいすけお兄さんそっくりの、かぞえてんぐさん。数を数えることでエクスタシーを感じて、恍惚の表情を浮かべるという、子ども番組では異例のキレたキャラ設定に、全国のママさんが夢中になったことでしょう。かぞえてんぐさんが、特別編で『かぞえてんぐのうた』を熱唱し、さながら山口百恵さんの引退のように、マイク……ではなく、いつも持っているヤツデのうちわをステージに置いて去っていったシーンでも、やはりウルっときてしまいました。ああ、てんぐさんが旅に出てしまう……。

旅先でも、楽しく数を数え続けてね

卒業報告の時のだいすけお兄さんはいつもの笑顔でしたが、目が涙でうるんでいるように私には見えました。新しくうたのお兄さんになるゆういちろうお兄さんも加わり、あつこお姉さん、よしお兄さん、りさお姉さんと一緒に、だいすけお兄さんを囲んで最後の歌を歌い、普段のエンディングと変わらずみんな笑顔で番組は終わりました。「終わってしまった……」しばらくめそめそしてしまったのは、言うまでもありません。

でも、卒業しても、だいすけお兄さんは、ずっとみんなのうたのお兄さんです。だいすけお兄さんの歌声が本当に大好きでした。9年間、本当におつかれさまでした!

作者プロフィール

前川さなえ
イラストレーター
1980年三重県四日市生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒業後、デザイン会社勤務を経て結婚と同時にフリーのイラストレーターに。商業イラストをメインに似顔絵師としても活動。
妊娠をきっかけに始めたブログ「ぷにんぷ妊婦」で、ドタバタながらも楽しく充実した子育ての日々をつづっている。ブログを書籍化したコミックエッセイ「ぷにんぷかあさん~今日も育児日和~」(マイナビ刊)、「5歳だって女。」(KADOKAWA刊)販売中。好きな曲がり角は左折。