ビットコインのメリットは?

さて、ここまでビットコインの安全性について論じてきたが、実際のところ、使うメリットはあるのだろうか? 平野氏は「ビットコインは非常に利便性が高いです」と語る。

平野氏は「シンガポールなどのアジアの国々と異なり、国際送金に縁が薄く、また、金融サービスが充実している日本ではあまりメリットは感じられないかもしれないが」と前置きした上で、ビットコインのメリットの1つとして「国際送金の手数料」を挙げる。

通常、国際送金には高い手数料がかかるが、ビットコインには国境がなく、直接送金する仕組みであるため、送金手数料が安い。

平野氏は、さらにビットコインを支えているブロックチェーンについても、さまざまな用途がありうると述べる。

例えば、日本においてブロックチェーンのメリットが得られる例として、地域通貨における利用を挙げる。以前、地方自治体は地域振興券を発行したが、その印刷、提供、換金、利用状況の管理は実に大変だったという。そこで、地域振興券の代わりにブロックチェーンを使った地域通貨を配布すれば、印刷や配布の手間を省くことができ、利用状況も既存のブロックチェーンのシステムでリアルタイムに確認できる。

ビットコインの抱える課題

ただし、ビットコインに課題がないわけではない。最近、ビットコインの為替が高騰した後、下落したというニュースを耳にした人もいるだろう。平野氏は「現状のビットコインは、企業が利用するには為替リスクが高いのが問題です。為替の変動が激しくて読めないため、利便性を理解したとしても、企業が利用するには難しい状況です。ビットコインが企業で普及するかどうかは、為替の安定性にかかっています」と話す。

ちなみに、平野氏が代表理事を務めるブロックチェーン推進協会では、ブロックチェーンで実装した仮想通貨を企業で使えるものにするために、円に対して為替が変動しにくいシステムの社会実験を実施しようという動きがあるという。

もう1つのビットコインの課題が「怪しい」仮想通貨の存在だ。「残念ながら、ビットコイン以外に投機を目的とした、いわゆる詐欺まがいの仮想通貨もあります。こうした問題のある仮想通貨を一つ一つ排除していきながら、健全性が保たれる状況になれば普及していくことになるでしょう」(平野氏)

また、Webで検索すると、古い情報がヒットするケースが多いこともビットコインを正しく理解する妨げになっているそうだ。古い情報が発信された頃と今では状況が変わっているため、平野氏は「新しい情報を得るためには、検索結果の日付には注意してください。そうしないと、誤った情報を得ることになってしまう可能性があります」とアドバイスする。

平野氏は「今後、Fintechは必ず普及するでしょう。したがって、最低限、情報をウォッチしておくことをオススメします。何も知らない状況で恐れる前に、まずは正しい情報、技術動向を知りましょう」と語る。

正直なところ、筆者自身、今回平野氏に話を伺って、ビットコインに対する「疑惑」が晴れた。人間、知らないものには恐怖を抱きがちだ。知識を仕入れて、正しく恐れたいものだ。