2016年後半、ある大手私鉄が掲出した電車内のマナーに関するポスターが話題となった。そのマナーとは「電車内における化粧」だ。私たちも普段電車を利用する際、度々目にする光景と言える。
当該ポスターは電車内の化粧を控えることを促す内容であったが、その内容を受けて、SNS上の意見は「どうしてマナー違反なのか」「なぜ電車内で化粧をするのか理解できない」などと賛否が大きく割れていた。
東京都・新宿駅の一日の平均乗降者数は私鉄を含めれば約360万人にもなると言われるなど、日本は電車を利用する人が非常に多い。それだけにこのポスターへの反響が大きかったことが予想されるが、日本とは電車の利用状況が異なる海外で育った人たちの反応はどのようなものだろうか。
今回は日本在住の外国人20人に「電車内の化粧」について質問してみたので、気になった意見を紹介しよう。
Q.電車内で化粧をする日本人女性をどう思うか、母国と比較して教えてください
容認派の意見
・「特に何も思いません。母国では、そういう人を見たことがありません」(ギリシャ/30代後半/男性)
・「台湾も同じため、特に何も思わない」(台湾/20代後半/男性)
・「普通。ベトナム人の女性はあまり化粧していないためあまり見かけていない」(ベトナム/30代前半/女性)
・「イタリアでは日本ほど電車に乗る機会はなかったですが、どの国でもあまり気になりません」(イタリア/30代前半/男性)
・「大丈夫だと思います。周りに迷惑でなければ、問題がありません」(アメリカ/20代後半/男性)
・「韓国でも問題になっているが、女性がどこで何をするのであれ、それは女性の自由だ。最近の化粧品は粉も飛ばないし、化粧品を大きく振りかぶるわけでもない。ただ男性や一部の人が、それはマナー違反だと主張しているだけ。女性が電車で化粧することで、一体何の被害が発生しているのか、具体的に言えるのか。そもそも、『化粧=女性の社会的マナー』のような社会的認識こそ、間違っていると思う」(韓国/30代前半/女性)
・「悪い態度だと思えない。東京の女性は時間に追われているので大変」(フランス/30代前半/女性)
・「ロシアでは完全にOKな行為です。といっても、普通は家を出る前にします。電車が混んでいてできないからです。でもやるとしたら、別にかまわないです」(ロシア/30代前半/女性)
・「化粧する時間がなかったんだなぁと思う。どんな化粧するのかを見たくなるね」(モンゴル/40代前半/女性)
反対派の意見
・「不適切だと思います。母国では、化粧は化粧室でするものです」(ウクライナ/30代前半/男性)
・「国では見かけません。電車は家ではないから、あまり本格的な化粧はしないで欲しいです」(モロッコ/30代前半/男性)
・「電車の中で化粧をするのはマナー違反です」(エジプト/30代前半/男性)
・「他人の目線を気にするのは日本独特の文化とも言えるでしょうから、日本においてはあまり良くないと思う。しかし、母国では特に気にならない」(インドネシア/30代前半/男性)
・「ちょっと気持ち悪いと思います。母国では家で化粧を済ませて出かけるのが一般的で、途中でその必要があれば、化粧室を利用してそこでするのが普通です。母国の女性は人前で化粧を一切しません」(ブラジル/40代前半/男性)
・「日本の女性は残念です。綺麗な方が多いので、電車の中で化粧はやめてと思います。ドイツではあまりないと思いますが」(ドイツ/40代後半/女性)
・「化粧しているときに腕を動かすため、人にぶつかる可能性があることからあまり好ましくない行為だと思う。タイでも最近増えているらしい。批判の声もあがってきている」(タイ/30代前半/女性)
・「少しおかしいと思います」(インド/30代後半/女性)
・「あまり好きではないです。ポーランドでは誰もそんなことをしていないです。恥ずかしいからです」(ポーランド/40代前半/女性)
・「普通ではない。注目されてしまう」(トルコ/30代後半/男性)
・「最近あまり見かけなくなりましたね。母国ではしないです」(キルギス/30代前半/女性)
■総評
結果は「賛成派」に分類できる回答が9票(男性4票、女性5票)、「反対派」に分類できる回答が11票(男性6票、女性5票)と拮抗する形で意見が割れた。
賛成派の意見を総合すると、「多忙のため家で化粧をする時間がないだろうし、周囲に直接迷惑をかけているわけではないためOK」といったものになるだろうか。一方、反対派の意見をまとめると「化粧は自宅や化粧室でするのが一般的であり、公衆の面前ですべき行為ではない」となる。
育ってきた環境や個々人の価値観によって、ある行為がマナーに違反しているかどうかを判断する基準は変わってくる。それは人間として当たり前のことだろう。だからこそ、自分の何気ない行動がもしかしたら周囲にとって迷惑になっている可能性がある事実を、私たちは再認識する必要がありそうだ。
※写真と本文は関係ありません
調査時期: 2017年1月23日~2017年2月28日
調査対象: 日本在住の外国人
調査数: 20名
調査方法: インターネット応募式アンケート