山梨県を代表する石和温泉は、駅周辺に50軒の宿が立ち並ぶ大温泉地。新宿から電車で約90分の距離にあり、大半の宿が駅から徒歩圏内と交通至便だ。笛吹市は桃の名産地で日本一の桃源郷として知られるが、実は桜も素晴らしく、春には温泉街自体が花見名所になる。甲州銘菓「信玄餅」の工場も至近距離にあり、格安販売の直売所も大人気。そこで今回、自然もグルメも楽しめる、石和温泉の魅力を一挙に紹介しよう。

石和温泉は花見の名所で、滞在中に桜の絶景を楽しめる

温泉街自体が花見名所! 春の石和温泉で桜の絶景を

石和温泉の温泉街は、石和温泉駅周辺から東側に伸びており、メインストリートは「さくら温泉通り」と呼ばれる。その名の通り桜並木になっており、満開時には絶景だ。笛吹市を代表する花見名所のひとつで、夜には夜桜のライトアップも行われる。

桜並木がどこまでも続く、石和温泉のメインストリート「さくら温泉通り」

石和温泉の「さくら温泉通り」は非常に変わった構造で、中央に用水路が流れ、両岸が桜並木。その外側に道路が2本あり、それぞれ一方通行になっている。桜並木の足元はウッドデッキになっており、美しい桜と用水路のコラボを眺めながら、春の散策を気分よく楽しめる。温泉街にいながらにしてこれ程絶景の桜を楽しめる温泉地は、日本中探しても見つからないに違いない。

●information
石和温泉「さくら温泉通り」
住所: 山梨県笛吹市石和町川中島
アクセス: JR中央本線石和温泉駅から徒歩約10分

桜と桃の絶景に古墳とリニアがコラボ

石和温泉がある笛吹市では、桃源郷春まつりが開催中。石和温泉の「さくら温泉通り」も会場のひとつだ。温泉街の花見でも十分だが、もっと見たいという欲張りな人は、メイン会場の「八代ふるさと公園」へ行こう。笛吹市桃源郷春まつりのメイン会場だけあり、公園には桜がたくさんある。周囲には桃もあり、桜と桃が競演する様子は、まさに桃源郷。見頃の時期には、夜桜のライトアップも行われる。

「八代ふるさと公園」の甲州蚕影桜と盃塚古墳

「八代ふるさと公園」は古墳があることでも知られ、桜と古墳のコラボも楽しめる。中でも、「甲州蚕影桜(こうしゅうこかげざくら)」と盃塚古墳のコラボは、公園を代表する絶景だ。

実は「八代ふるさと公園」には、リニア中央新幹線も通っており、展望台も整備されている。リニア中央新幹線は大半がトンネル区間なので、地上を走行するポイントは貴重なのだ。ただし、まだ開業前の試験走行なので、頻繁には走行しておらず、事前に試験時間を確認する必要がある。

●information
笛吹市桃源郷春まつりメイン会場「八代ふるさと公園」
住所: 山梨県笛吹市八代町岡2223-1
アクセス: JR中央本線石和温泉駅から車約20分。見頃の週末は石和温泉駅から「春の花見バスツアー」を1日3便運行(事前予約制)

甲州銘菓「信玄餅」を格安販売

石和温泉の至近距離には、甲州銘菓「桔梗信玄餅」を製造する桔梗屋の工場があり、特に「信玄餅詰め放題」は猛烈な人気だ。しかし、週末は早朝から並ばないと整理券を入手できないので、平日の場合だけオススメしたい。

桔梗屋工場「社員特価販売1/2」は右側。中央は「信玄餅詰め放題」の会場

週末でも大丈夫なのが、工場直売のアウトレット店「社員特価販売1/2」。名前の通り、全品約半額の社員販売価格で購入できる。

「信玄餅」4個入り税込332円は、ひとり1袋まで。売切れ必至なので、真っ先にカゴに入れよう

人気の信玄餅も、4個入り税込332円の破格値で販売。ひとり1袋に制限されているが、最初に売り切れるので、入店したら真っ先にカゴに入れて確保しよう。朝9時開店だが、週末は9時半頃に信玄餅が売切れる。信玄餅を買いたい場合には、開店前から並ぶ必要がある。

和菓子屋だが、プチカップケーキ8個入り税込237円も激ウマ!

信玄餅以外では、プチカップケーキ8個入りもオススメ。和菓子屋なので、洋菓子は期待できないと思ったら大間違い。有名な銘菓を作る菓子工場だけあり、癖になるおいしさで、まとめ買いしたくなるほどだ。

桔梗信玄餅アイスの製造過程で作られた、黒蜜アイス税込162円は絶品

個人的に一番のオススメが、黒蜜アイス。桔梗信玄餅アイスの製造過程であふれ出た食材を再利用してるため、破格値で販売されているが味は絶品。写真右側の何も印刷されていない真っ白なカップなので、誰も見向きもしないが、断然オススメだ。

以上3点で731円とは、本当に格安。しかも、どれも安心のおいしさなのだから、これ程うれしいことはない。石和温泉に行ったら、絶対に立ち寄りたい。

●information
桔梗屋工場「社員特価販売1/2」
住所: 山梨県笛吹市一宮町坪井1928
アクセス: JR中央本線石和温泉駅から笛吹市一宮循環バス15分、一宮温泉病院下車徒歩13分

自家源泉2本で源泉かけ流し

グルメを楽しんだら今度こそ温泉へ。石和温泉では自家源泉を所有し、利用している宿を選びたい。中でも温泉面で特にオススメなのが「旅館 深雪温泉」だ。

深雪温泉の露天風呂には、自家源泉2本がそれぞれ注がれる

2本の自家源泉は「完の湯」「熟の湯」と命名されており、2つ併せて「完熟の湯」だ。源泉温度が異なり、完の湯が51度、熟の湯が36度。それぞれに湯口があるので、入浴する場所により好みの湯加減まで選べる優れものだ。

●information
石和温泉 旅館 深雪温泉
住所: 山梨県笛吹市石和町市部822
アクセス: JR中央本線石和温泉駅から徒歩約10分

石和温泉を山梨伝統の温冷交互入浴で満喫

石和温泉は新興の温泉地だが、糸柳は唯一明治時代から続く老舗旅館だ。創業130余年の歴史を誇り、「石和名湯館」と自ら名湯を名乗っているのは伊達ではない。

糸柳は内湯と露天風呂に湯船が多数あり、温泉三昧ができる

自家源泉の温度は32度と低めだが、源泉を加熱かけ流しで利用している。中には、源泉そのままの水風呂もあり、温泉と冷泉を交互に楽しめる。実は山梨県には源泉温度が低い温泉が多く、交互入浴は甲州の伝統的な温泉文化なのだ。

糸柳も、前述の深雪温泉も日帰り入浴を受付ているので、まずは気軽に立ち寄り湯で泉質の良さを確認した上で、宿泊を検討することも可能だ。

●information
石和温泉 石和名湯館 糸柳
住所: 山梨県笛吹市石和町駅前13-8
アクセス: JR中央本線石和温泉駅より徒歩約3分

交通至便で桜や桃の花見を楽しめ、甲州銘菓の工場直売所もある石和温泉の魅力、いかがだっただろうか。今回は笛吹市内の観光スポットのみ紹介したが、山梨県には世界遺産の富士山を筆頭に魅力的な観光地が多数あり、それらを周遊して楽しめるのも魅力だ。

仮に石和温泉の桜に間に合わない時期に訪問しても、標高が高い富士河口湖温泉郷方面や山梨市方面へ行けば、まだまだ花見を楽しめる。ぶどうの丘(勝沼市)のワイン試飲し放題や、シャトレーゼ白州工場(北杜市)のアイス食べ放題など、充実したグルメも存分に満喫しよう。

筆者プロフィール: 藤田聡

温泉研究家、オールアバウト「温泉」「紅葉スポット」ガイド。温泉旅行検定試験で2年連続日本一になり、検定協会から「温泉旅行博士」の称号を授与される。温泉地を中心に周辺観光地の取材・撮影を行い、海外旅行にも決して負けない、国内旅行の奥深い魅力をメディアで発信中。紅葉や一本桜、夜景や四季の花などの絶景スポットにも精通している。