磨き残しの多い5大箇所って? ※写真と本文は関係ありません

歯磨きは毎日欠かさないのに、いつの間にか歯石がたまってしまったり、むし歯になっていたりすることはないだろうか。子供の頃から行っている歯磨きでも、つい自己流になってしまうと、磨き残しが出てしまうことがある。

今回は、歯の基本的な磨き方や磨き残しが多い箇所などについて、一般歯科・小児歯科・口腔外科の小川惠医師にうかがった。いつまでも自分の歯で食事ができるように、基本から覚え直してみてほしい。

磨き残しが多い5大箇所

10年位前と比べて最近は、男性も女性もかなり多くの人がオーラルケアに気を配っていると思います。私は、都内のベッドタウンで歯科医院をやっていますが、土・日になると平日はお勤めで来院できない多くの会社員の患者さんが通院されているからです。それもむし歯の治療ではなく、数カ月に1回の歯のクリーニングをするメンテナンスで通院されています。

ただ、そういったケアを日頃心掛けている、歯に対して意識の高い方でも、どうしても磨き残しというのはあるものです。

次の5つが磨き残しの多い箇所です。

1.奥歯の噛(か)む面の溝

2.歯と歯の間

3.歯と歯肉の隙間(歯間ポケット)

4.一番奥歯の奥側の面

5.利き腕側の歯の頬側(特に上の歯)

「えー、たくさんあってどれから注意すればいいの? 」という方は、虫歯予防を第一に考えた場合、まず1と2を気をつけてみてください。歯周病を予防するには3も必須ですが、ここでは1と2についてお話しします。

奥歯の噛む面の溝、歯と歯の間、歯と歯肉の隙間などは磨き残しに注意!

まず1の奥歯について、6歳で生え始める「第一大臼歯(6番、通称6歳臼歯)」、そしてその奥に生える「第二大臼歯(7番)」の歯の溝は、生えてすぐの頃から子供たちが一番むし歯になりやすい場所と言ってもいいでしょう。「生えて数カ月しかたっていないのにむし歯になってしまった(泣)」なんてお子さんもたくさん見かけます。それで奥歯に詰め物をした方も多いのではないでしょうか。でも、ここの磨き方は簡単です。それは、上下左右の奥歯2本ずつの噛む面を「溝の汚れを取ること」を意識をしてゴシゴシと磨くこと。やってみてくださいね。

2の歯と歯の間は、正直、歯ブラシだけでは汚れは取り除けませんので、「糸ようじ(フロス)」を利用してください。糸ようじは面倒くさいイメージがありますが、慣れれば1分もかからず終わりますし、残念ながら糸ようじなくしては、ここのむし歯は予防できません。歯に意識の高いアメリカでは、多くの高校生がフロスを持ち歩いているそうです。歯ブラシは持っていなくてもフロスだけは持っている高校生も多いそうですよ。

磨き残しを起こさない歯磨きのコツは、自分の中でルーティーンワークを決めてしまうことがおすすめです。

例えば口の中を4ブロックに頭の中で考えて、「右上→左上→左下→右下」の順に45秒ずつ磨いていくと、トータルで3分になります。一つのブロックの中でも表側半分と裏側半分で45秒を更に半分ずつ割り振るといいでしょう。毎回タイマーで計るわけにはいきませんので、何回か時計や砂時計を使ってやってみて自然と体に覚えさせ、後は毎日その方法で磨きましょう。左ばかり磨いて右が磨き残しが多いということも防げるので、効率的ですよね。

歯を磨くタイミング

歯を磨くタイミングは朝・昼・夜の食後が良いのですが、どうしても時間がなかったら上記の"丁寧磨き"は夜だけと決めてもいいかもしれません。最初からハードルを上げて続かなくなるより、毎日ご飯を食べるので、続けることが一番大切です。フロスも同じく慣れていない方は、まずは夜だけ使ってみてください。

また、食事直後が良いのか30分くらいたってからが良いのか疑問に思っている方もいるでしょう。酸の強い食べ物や飲み物(グレープフルーツジュースやオレンジジュース、コーラなどの炭酸飲料)を口にしたときは、酸で歯の表面が溶けやすくなっているので30分くらいして口の中が少し中性に近寄ってきてから磨くのが良いのですが、それ以外の普通の食べ物のときはすぐに磨いてください。ただ、普通の食事の後も食べた直後は歯の表面が溶けやすく傷つきやすいので、研磨剤があまり入っていない歯磨き粉や歯磨きジェルなどを使って磨くと良いでしょう。

電動歯ブラシのメリットとデメリット

患者さんに「電動ブラシを使っているのに何で磨き残しがあるのかしら……? 」と質問を受けることがあります。普通の歯ブラシにも電動歯ブラシにもそれぞれ良い点と悪い点があります。また、分類として、電動歯ブラシは普通の電動歯ブラシと音波歯ブラシに分かれています。

まず電動歯ブラシの良い点は、手を動かすのが上手じゃなくても、満遍なく磨けるという点です。一方で悪い点は、奥歯の一番奥の面などはヘッドが入りづらくて磨き残しが出てしまうこと。その点、歯ブラシは手を小刻みに上手に動かさないとなりませんが、奥歯の奥の面など自分の意識した所が磨きやすいです。

以上の点からも、どちらか一つに絞らずに両方を上手く使うとより良いと思います。1回の歯磨きに両方は時間をかけられない場合は、朝は時間がないから電動歯ブラシで、夜は普通の歯ブラシで磨くなど時間帯によって分けると良いでしょう。

音波ブラシは、音波が水流を作って毛先の当たっていない所でも振動と水流によって汚れを除いていくので、毛先の届かない歯と歯肉の隙間などにはとても有効です。

なお最近では、「ワンタフト」という小さい歯ブラシがとても注目されています。"むし歯予防大国"のスウェーデンでは、まずワンタフトで自分の磨き残しが多い箇所を磨いてから普通の歯ブラシで磨くととても効率よく歯を磨けるということで、今日本でもその磨き方が広まりつつあります。


取材協力: 小川惠(オガワ・メグミ)

一般歯科、小児歯科、口腔外科医
大学病院勤務を経て、地域医療に携わりたいと一般歯科医院に勤務し、2010年に自らの歯科医院を開業。0歳の赤ちゃんから高齢者の方まで幅広い年代の方のファミリードクターをめざし、日々地域の患者様のお口の健康を第一に考えた診療を行っています。En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。