旅先で歯の詰め物が取れてしまったら?

旅行中に体調を崩しても、すぐにかかりつけの病院に行くのは難しい。歯の場合も同じだ。もし銀歯などの歯の詰め物が取れてしまったら、どのような対処をすればいいのだろうか。

今回は、旅行中に歯の詰め物が取れてしまったときの対処法について、一般歯科・小児歯科・口腔外科の小川惠医師にお聞きした。

やってはいけないこと3つ

旅行中に歯の詰め物が取れてしまった……なんて緊急事態もあると思います。旅行中、すぐに歯科医院に行くのは難しいですよね。自分でどうにかしないと、と思ってしまいがちですが、次の3つはやってはいけません。

1.取れた詰め物を接着剤などではつけない
自分で取れた詰め物を接着剤などではつけないでください。汚れの上にくっつけると、むし歯の原因にもなります。間違ってつけてしまうと、噛(か)み合わせが合わなくて高さが高くなることがありますし、高いまま噛んでしまうと歯が折れる原因になることもあります。

2.詰め物が取れた歯でなるべく噛まない
詰め物が取れた歯では、なるべく噛まないようにしてください。歯が欠けることがあります。もし根っこまで破折線が入ってしまったら最悪の場合、歯を抜かなければならなくなってしまうこともあります。

3.取れた詰め物をコインケースなどにしまわない
取れた詰め物をコインケースなどにしまわないようにしてください。ほんの少し変形するだけでも元に戻せなくなってしまいます。力を入れずにきれいに洗い、踏んだりしないようにファスナーのついたビニール袋などに入れて、なるべく力を加えないようにして保管していてください。

歯科医院に行くまでのベストな過ごし方

歯科医院に行ける日まで、次のことに気をつけて過ごしましょう。

まず、詰め物が取れた歯はよく歯磨きしておいてください。詰め物が取れてしまうと食べ物が挟まりやすくなります。そして、詰め物が取れた歯は、歯の中の層(象牙質)がむし歯になりやすいので要注意です。

次に、詰め物が取れた歯がしみるときは、何度も本当にしみるか試すことはしないで休ませてあげてください。神経の残っている歯は詰め物が取れるとしみることがありますが、真面目な人ほど「本当にしみるかな……」などと何度もしみる食べ物や飲み物を口にするものです。そうすると刺激で中の神経が炎症を起こし、神経が死んでしまうことがあります。歯がしみたら、しみる物は食べないようにしてその歯を休ませてください。

放置するとこんな危険が!

詰め物が取れたのを放置したままにしてしまうと、むし歯が進行する危険があります。詰め物がしてある歯は通常、歯の中の層の象牙質までむし歯になっていることが多く、歯の一番外側のエナメル質を削って象牙質の層に詰め物をしているので、詰め物が取れると象牙質の層がむき出しになっています。象牙質はエナメル質よりも柔らかいので、磨き残しがあると、エナメル質よりもむし歯が進行しやすいのです。

象牙質のさらに内側が歯の神経になるので、虫歯が神経に到達するかしないかによって歯の神経を保存したまま治療できるか、あるいは神経を抜いて治療するようになるのかが決まります。そして、それによって治療方法も回数も変わるので、なるべく早く歯医者に行くことをおすすめします。

※写真と本文は関係ありません


取材協力: 小川惠(オガワ・メグミ)

一般歯科、小児歯科、口腔外科医
大学病院勤務を経て、地域医療に携わりたいと一般歯科医院に勤務し、2010年に自らの歯科医院を開業。0歳の赤ちゃんから高齢者の方まで幅広い年代の方のファミリードクターをめざし、日々地域の患者様のお口の健康を第一に考えた診療を行っています。En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。