子育て・保育の専門家、NPO法人フローレンスの駒崎弘樹 代表理事らは3月27日、塩崎恭久 厚生労働大臣に、受動喫煙防止法の推進についての要望書を提出。その後会見を開き、「未来を担う子どもたちを守るために、"例外のない"受動喫煙防止法を強く要望したい」と訴えた。
受動喫煙防止対策は、厚生労働省が今国会に提出予定の健康増進法改正案の中で盛り込んでいるもの。同省が2017年3月に示した「受動喫煙防止対策の強化について」(基本的な考え方の案)によれば、飲食店(小規模のバー、スナック等は除く)も含め、原則として屋内禁煙を義務化し、違反した場合には、罰則も適用するとしている。
また、世界188カ国のうち、公共の場所全て(8種類/医療施設、大学以外の学校、大学、行政機関、事業所、飲食店、バー、公共交通機関)に屋内全面禁煙義務の法律があるのは49カ国あり、0~2種類にとどまっているのは、日本などを含む70カ国のみ。同省は「日本は屋内全面禁煙義務の法律がなく、世界最低レベルの分類」と指摘している。
会見では駒崎氏のほか、賛同者の宋美玄氏(産婦人科医 医学博士)、中室牧子氏(慶應大学 総合政策学部 准教授)、望月友美子氏(元世界保健機関たばこ規制部長・日本対がん協会参事 医学博士)が発言した。このうち駒崎氏は、「厚労省の『たばこ白書』によれば、受動喫煙によって乳幼児突然死症候群の発症率は4.7倍、喘息の入院率は1.43~1.72倍に高まる」と、子どもへの影響懸念を表明。「諸外国と比較して、日本のたばこ規制は非常にゆるい。一部の議員から反発があり、法案が進まないという状況は良くなく、"例外のない"受動喫煙防止法を強く要望したい」と語った。
また宋氏は、「妊娠中の受動喫煙は、妊娠高血圧症をはじめとした数々の合併症リスクを上昇させる。また、赤ちゃんに対しても、低出生体重児が増えるなど、悪影響があると言われている。妊娠が分かった人の中には、職場ですぐに報告できない人もいることなどを考えると、妊娠中の従業員への健康配慮という視点からも、厚生労働省の案のような厳格な規制が必要だ」と語った。
さらに中室氏は、経済学の視点から「諸外国では、受動喫煙に関する規制を強化する飲食店の売り上げは、減らないどころか増加し、ホテルなどについても影響がないという研究結果があり、そのようなエビデンスに基づいて厳しい規制がとられている」と指摘。
そして、「日本ではいまだに飲食店の売り上げが減るのではないかとか、喫煙者の権利があるのではないかという意見がある。しかし、特定のステークホルダーの利益ではなく、広く国民の利益を守るという観点から、科学的根拠に基づいて政策を行っていくことが非常に重要だ」と訴えている。