生後8カ月頃から順番に生え始め、計20本がそろう子供の「乳歯」。一般に、中学生くらいまでには大人の歯である「永久歯」に生え変わる。いずれ生え変わるのなら、乳歯にむし歯があっても関係ないのでは? と思う人はいないだろうか。実は、乳歯のむし歯が永久歯にも影響する可能性があるというのだ。
今回は、乳歯のむし歯が永久歯に及ぼす影響について、一般歯科・小児歯科・口腔外科の小川惠医師にお聞きした。
乳歯のむし歯が及ぼす影響
乳歯がむし歯になると、永久歯に次のような影響を及ぼすことがあります。
1.永久歯が発育不全を起こす
乳歯のむし歯が進行すると歯の根の中が細菌に感染し、乳歯の直下にある発育中の永久歯に影響して、永久歯が発育不全を起こすことがあります。発育不全を起こした歯は、白斑が出たり、茶色くなったり、表面が粗造で凹凸した面になったりします。
2.永久歯の歯並びが悪くなる
乳歯のむし歯が進行して歯の根に細菌がたまったままにしておくと、そこに生えようとしている後続永久歯が細菌を避けようとして生えてくるので、歯列からはみ出て曲がって生えてきてしまい、歯並びが悪くなることがあります。
また、乳歯がむし歯になり、生え変わる時期よりも早くに抜いてしまうことによるリスクもあります。両サイドの乳歯が抜いた後のスペースに倒れこんでしまい、本来そこに生えるはずの永久歯のスペースがなくなってしまうので、これも永久歯の歯並びが悪くなる原因の一つになります。
3.永久歯がむし歯になりやすくなる
乳歯から永久歯に生え変わる時期は、乳歯と永久歯が混在する期間があります(約6歳から14歳くらいまでで、「混合歯列期」と言います)。この時期に乳歯にむし歯があると、永久歯もむし歯になりやすくなります。生えてきたばかりの永久歯は未熟で柔らかいので、同じ口の中でむし歯菌が多いと永久歯までむし歯になりやすく、かつむし歯の進行が速いのです。
子供の歯磨きのコツ
大人でも歯磨きは難しいものです。理想では、自分で磨けるようになっても、中学生くらいまでは保護者の方が仕上げ磨きをしてあげると、むし歯になる確率がぐっと下がると思います。
しかし、これを実際に保護者の方にお話しすると、「小学校3年生くらいになるとお子さんが嫌がる」という話をよく聞きます。親御さんによる仕上げ磨きが難しい場合は、定期的に近所の歯科医院で子供の時期からメインテナンスをしてもらうと、歯科衛生士に歯磨き指導などもしてもらえてよいでしょう。
また、6歳くらいまではお子さんを膝の上に寝かせて、親御さんが満遍なく磨いてあげることをおすすめします。頬の面は「イー」っと噛(か)んだ状態にさせてブラシを当てると磨きやすいです。
磨き方が分からない場合は、歯科医師や歯科衛生士に磨き方を直接聞くと、そのお子さんに合った磨き方や歯ブラシを提案してもらえますので、相談してみてくださいね。
※写真と本文は関係ありません
取材協力: 小川惠(オガワ・メグミ)
一般歯科、小児歯科、口腔外科医
大学病院勤務を経て、地域医療に携わりたいと一般歯科医院に勤務し、2010年に自らの歯科医院を開業。0歳の赤ちゃんから高齢者の方まで幅広い年代の方のファミリードクターをめざし、日々地域の患者様のお口の健康を第一に考えた診療を行っています。En女医会所属。
En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。